2020.04.01 08:00

【緊急経済対策】困窮者の救済を優先せよ

 新型コロナウイルスの感染拡大による景気の急速な悪化に対処するため、安倍晋三首相が緊急経済対策の策定を関係閣僚に指示した。
 財源となる2020年度第1次補正予算案を4月上旬にも編成し、大型連休前の成立を目指すという。
 首相は記者会見で「リーマン・ショック時を上回るかつてない規模の対策」と述べた。財政支出15兆円、民間支出を合わせた事業規模で56兆円だったリーマン時を超える対策が見込まれている。
 首相、政府としては大規模な対策を示して国民の不安を和らげ、国内経済の落ち込みを最小限に抑えたい狙いがあるのだろう。
 ただ、今回の事態はリーマン・ショックとは異なる。感染抑止のために人や物の動きが制限され、経済活動が停滞し、実体経済がダメージを受けている。
 規模先行の議論は効果が薄いばらまきに陥りかねない。感染の終息が見通せない今の局面では、外出自粛要請などで仕事や事業ができなくなっている世帯や企業など困窮者の救済を優先し、有効な対策を積み上げるべきだ。
 首相は、対策の柱として家庭への現金給付を挙げている。新型コロナの影響で所得が減った世帯を対象に配布する方向で、所得制限を設ける案が浮上している。給付額や給付対象の線引きは今後詰めるようだが、国民が納得できる制度設計の工夫と説明が求められよう。
 検討段階では5月中の実施を目指すとしていたが、目の前の生活に窮する世帯への救済が遅きに失することがあってはならない。迅速な議論が必要になる。
 企業や中小事業者の救済も待ったなしだ。訪日外国人の激減や外出の自粛は旅行や運輸、外食、小売業をはじめ幅広い産業に影響を及ぼしており、地域経済の打撃は大きい。
 首相は資金繰り支援策の拡充や、中小事業者向けに新しい給付金制度を設けると表明した。従業員を解雇しなかった中小企業に対し、雇用調整助成金の給付率を引き上げる方針も示している。
 いずれも必要な対策である。ただし、感染が終息するまでの期間が長期化するようだと、中小企業の体力が尽きて雇用が失われ、景気は腰折れする懸念がある。状況に応じた継続的な支援が欠かせない。
 一方で政府は消費喚起策も盛り込む方向だが、時期尚早ではないか。自民党内では国産牛肉を購入できる「お肉券」の発行を求めるなど、支持基盤への利益誘導的な動きが疑問視された。
 今は政府や自治体が感染抑止を最優先し、国民に外出や経済活動の自粛を求めている段階だ。ブレーキとアクセルを同時に踏むような対策になるとすれば違和感が拭えない。
 国内経済が危機的状況にあるのは間違いない。政府には規模ありきではなく、数次にわたったとしても感染症の動向と政策の有効性を見極めた対策の積み上げを求めたい。

カテゴリー: 社説

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