2020.03.31 08:39

ロマンあふれる酒づくり 水深6000mに1年「宇宙深海酒」酵母

海底探査機に酵母をくくりつけて=丸部分=深海に沈めた(昨年3月、海洋研究開発機構提供=写真は一部加工しています)
海底探査機に酵母をくくりつけて=丸部分=深海に沈めた(昨年3月、海洋研究開発機構提供=写真は一部加工しています)
生存は未確認
 宇宙と深海を経験した高知県産の酵母で酒を仕込もうと、高知県工業技術センターなどが進める「宇宙深海酒」プロジェクトで、宇宙を経て深海約6千メートルに1年間置かれた酵母が、このほど高知に帰ってきた。今のところ生存が確認できていないが、「未知の取り組み。まだ可能性はある」と望みをつないでいる。

 土佐酒のPRへ、高知県工業技術センターなど産学官グループは2005年、宇宙に10日間滞在させた「宇宙酵母」で「土佐宇宙酒」を醸造。2006年に発売し、県内外から注目された。

 取り組みが再燃したのが数年前。「もう一度盛り上げたい」という高知県工業技術センターの上東治彦・醸造技術企画監と、日本酒が好きな海洋研究開発機構「高知コア研究所」(南国市)の諸野祐樹・主任研究員が意気投合。海洋研究開発機構が携わる「深海資源調査技術」の研究に便乗する形で「宇宙深海酒」プロジェクトを進めることになった。

 舞台は、本州から約1800キロ離れた、いずれも水深6千メートル近い南鳥島周辺の2カ所。高知県工業技術センターで保存する6種類の宇宙酵母をパックに入れ、海底探査機にくくりつけて2019年3月に沈めた。

 水温1・5度、水圧約600気圧の過酷な環境から無事戻れば、宇宙から海底まで406キロの高低差を経験したことになる。「酵母や味に与える影響も楽しみ」(上東さん)との期待を乗せ、今年3月中旬に引き上げられた。

帰ってきた酵母の生存を確認する上東治彦さん=右=と諸野祐樹さん(30日午前、高知市布師田)
帰ってきた酵母の生存を確認する上東治彦さん=右=と諸野祐樹さん(30日午前、高知市布師田)
 27日夕、高知市布師田の高知県工業技術センターに氷詰めのパックが持ち込まれると早速、顕微鏡で中身を調べ、酵母の姿「菌体」をいくつも確認した。ただ、生死の確認のため気温30度の生育に適した環境で30日まで培養したところ、菌体が確認できなくなった。

 上東さんは「確認できた菌体が全滅しているとは言い切れない。冬眠状態のように増殖する力が弱っているのかもしれず、もう少し培養に時間をかけて確認したい」と話す。

 仮に生存が確認できなくても「圧力に強い宇宙酵母を選抜し、再び深海に」と上東さん。諸野さんも「こういう研究は簡単に諦めるとゴールにたどり着かない」と、ロマンあふれる酒づくりに執念を見せている。(井上智仁)

カテゴリー: 環境・科学

ページトップへ