2020.03.31 08:00

【同一賃金】不合理な格差なくしたい

 4月から働き方改革を巡る新たな制度が動きだす。
 非正規雇用労働者と正社員の不合理な待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」が、大企業で始まる。大企業で既に実施されている時間外労働(残業)の上限規制が、中小企業でも導入される。
 ともに昨春施行された働き方改革関連法に基づく。長時間労働に歯止めをかけ、労働の質を高めるために軌道に乗せたい。
 同一労働同一賃金は、仕事の内容が同じで能力や成果も同じなら正社員、非正規を問わず賃金や手当などを同じ水準にしなければならない。中小企業は来年4月から始まる。大企業でスムーズに導入できるかどうかが中小の取り組みにも影響しそうだが、現状は心もとない。
 待遇改善の「本丸」は本給や賞与、退職金。ところが共同通信の調査では、主要110社のうち本給を見直すのは14社、賞与21社、退職金6社の計41社にとどまった。新たに交通費などの手当や慶弔休暇などを付与する見直しが多いとみられる。
 「仕事の内容が違うから賃金が違って当然」「正規と非正規では求める能力が異なる」とする企業もある。では具体的に仕事の内容がどう違うのか。どのような基準で能力や貢献度を判断し、給与や賞与に反映させているのか。
 待遇差を設けるなら、企業は合理的に説明しなければならない。賃金などを巡る客観的で透明性の高いルールを示し、働く側の合意を得る努力が求められる。
 大企業の5社に1社は、正社員の基本給や賞与を減らす可能性があるとの調査結果もある。正社員の待遇を悪化させることによって、同一労働同一賃金を実現することなど論外である。
 残業の上限規制は原則、月45時間、年360時間までとなった。ところが主要110社の調査では45%に当たる49社が、規制以前と比べて残業時間が「変わらない」「増えた」と回答。長時間労働の見直しも進んでいない実態がうかがえる。
 4月から上限規制が始まる中小企業は特に人手不足感が強い。残業でそれを補っている場合は、業績への影響が一層懸念されよう。
 現在は新型コロナウイルスの感染拡大で、大幅減収などの打撃を被っている企業も多い。同一労働同一賃金に伴う人件費アップなどを嫌い、非正規労働者の削減が広がる恐れもある。それでも働き方改革を後退させるわけにはいかない。
 人口減少時代に入り人手不足が深刻化する中、従業員の健康や生活を守ることに消極的な企業に人は集まらない。とりわけ公正な処遇は人事管理の基本だ。それが保障されなければ労働者の意欲や生産性を高めることはできない。
 そもそも日本では非正規労働者の賃金水準は正社員の6割程度で、欧州と比べても低い。大事なのは働き方改革を続けて、日本経済の持続可能性を高めることだ。

カテゴリー: 社説

ページトップへ