2020.03.30 08:00

【ロシア憲法改正】異様に映る権力への執着

 2024年に任期切れを迎えるロシアのプーチン大統領が、さらに任期を2期12年延ばして最長で36年まで大統領職にとどまる可能性が出てきた。
 続投できるようにする憲法改正案を自ら提起。既に上下両院を通過しており、4月22日に予定されている全国投票で過半数が承認すれば発効する。とはいえ今回改憲の動きはあまりにも唐突で、十分な論議も経ておらず異様に映る。
 憲法改正を巡っては、プーチン氏が今年1月中旬に突然表明し、下院に改正案を提出した。大統領任期は「連続2期を超えてはならない」とする現行規定から「連続」を削除。通算4期目のプーチン氏が大統領職にとどまる可能性を封じた。
 一方で現在は大統領の諮問機関にすぎない国家評議会に対し、国家権力機関の調整や内外政策の主要方針などを決定する強力な権限を与えることも盛り込んだ。プーチン氏が任期切れを見越し、自ら同評議会トップに就いて「院政」を敷くためではないかとみられていた。
 それが一変したのが3月上旬。下院の審議で世界初の女性宇宙飛行士として有名な与党「統一ロシア」のテレシコワ議員が修正案を提案、承認された。これにより現憲法下での大統領経験者は、過去の任期数を問わず大統領選に出馬できるようになった。
 最高実力者の任期に関わる重要な憲法改正の内容が、わずか2カ月の間にこれほど変わっていいものなのか。プーチン氏の通算5選に道を開くため、政権中枢が筋書きを書いた政治劇ともみられている。そうだとすれば恣意(しい)的と言うほかない。
 改憲の実現後、プーチン氏が実際に大統領選に出馬するかどうかは分からない。ただし、一連の動きからは自身の「レームダック(死に体)化」を防ぎ、影響力を維持したい思惑がうかがえよう。
 ロシアの有力紙によると、全国投票では7割超の賛成で改憲案が承認される見通しという。そうであっても国の内外に不透明な形で憲法改正のレールを敷き、権力保持へ道を開くやり方は大国のリーダーにふさわしくない。
 改憲案には「ロシア憲法に矛盾する国際条約はロシア国内で実行されない」との規定もある。ロシアはウクライナ南部のクリミア半島を編入するなど、「力による現状変更」を行った過去がある。国際社会のルールに背を向けるのではなく、より協調を重んじなければならない。
 日本との関係では「隣接国との国境画定を除き、領土割譲に向けた行為、呼び掛けを禁止する」との規定も気に掛かる。北方領土交渉は国境画定交渉と見なされ、禁止対象にならないようにも読める。
 しかし、ロシアの政界や社会が改正憲法を盾に、北方領土交渉への反対を強める状況が生まれれば影響は大きい。
 ロシアの改憲の行方を注視する必要がある。

カテゴリー: 社説

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