2020.03.28 08:00

【中学教科書検定】「深い学び」可能な態勢を

 来春から中学校で使われる教科書の検定結果を文部科学省が明らかにした。
 教科書は、子ども自身による「主体的・対話的で深い学び」という理念を掲げた新たな学習指導要領の全面実施に対応している。
 教員や生徒同士のやりとりによって深い学習につなげる工夫が各教科に取り入れられた。一方的に講義する従来の授業からの脱却がこれまで以上に教員には求められる。
 そうした指導にはきめ細かく丁寧な対応が必要で、教科書の分量にそれが反映されている。
 3年間で学ぶ各教科の平均ページ数の合計は前回の検定から8%近く増えて1万1千ページ(A5判換算)を超えた。2004年度の検定以降では最多になったという。
 ところが、授業時間数は現在の指導要領と変わっていない。同じ時間数でこれまで以上に分厚い教科書を現場では教えねばならない。
 文科省は「学習内容の軽重を付けるなど工夫を」としている。各授業での教員の創意工夫はむろん必要だが、決まった時間数の中ではそれも限界があるだろう。教わる側の生徒の負担も考えなければならない。
 授業だけでなく生徒指導や部活動などを抱える日本の教員の多忙ぶりは近年大きな課題になっている。
 そんな中で、「対話などを通した深い学び」という新指導要領の理想をどこまで実現できるのか。不安に感じている教育現場や教員は少なくないはずだ。
 国は、教員の「働き方改革」をさらに進めるとともに、教育予算や教員数を拡充してきめ細かい指導が可能な態勢を整えるべきだ。そうでなければ、理想は掛け声倒れになりかねない。
 教科別では英語や理科、社会などの平均ページ数が前回の検定より大きく増えた。
 英語は、お互いの考えや気持ちを伝える会話などを通じ、「読む・聞く・書く・話す」という4技能の力をつけることを重視した。買い物のやりとりを入れたり、美術館の音声ガイドを扱ったりした教科書もある。従来より英語を実践的に使う機会を増やしたという。
 小学校高学年では今春から英語が教科化される。英語に慣れた小学生を「英語嫌い」にしない工夫が求められる。
 理科や社会では、台風や火山、地震などの災害を学ぶほか、地域のハザードマップを調べたり、災害を伝える石碑を訪ねたりする学習が盛り込まれた教科書もある。そうした体験を自らの防災にどう生かすのか、生徒が意見を出し合う。
 答えが一つとは限らない問題を、議論を通して考える力がつけば、日本の子どもが弱いとされる知識の活用力アップも期待できるだろう。
 授業には時間を一定かけた教材研究が必要だが、教員の長時間労働は中学校現場が特に深刻だ。来春の新教科書導入前に、大きな宿題が国には残っている。

カテゴリー: 社説

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