2020.03.25 08:00

小社会 休眠打破

 3月は荒々しい季節だ、と随筆家の増田れい子さんは書く。ぬくぬくとした日差しかと思えば、翌日は残酷なほどの寒さが訪れる。冬と春との激烈な戦い。桜前線の上昇は「春の勝利のうた、冬への挽歌(ばんか)となってひびく」。

 桜ほど日本人が特別な愛情を抱いてめでる花もないだろう。ただ、それゆえに戦争中は、大和魂を象徴する、散り際は武士の潔さを示す、といったお題目も押し付けられた。日本人が桜本来の美しさを思い出したのは「戦後も十年を過ぎたころではなかったろうか」。

 以前の小欄でも触れたが、随筆家の岡部伊都子さんも同じ視点から「桜の木は、知らないことだ」と書いている。人間の思いは知らない。素直に咲いて散るだけのこと。岡部さんは「真実の桜への愛を歪(ゆが)めてはならない」。

 高知城のソメイヨシノに開花宣言が出た。東京都心より10日遅れ。桜の開花は夏場に作った花芽がいったん休眠し、冬の寒さで目覚める「休眠打破」を経る。同じ暖冬でも東京と比べ、温暖な高知は寝覚めが悪かったのか。

 桜も暖冬だったから早く咲くというものではなく、厳しい寒さという試練を越えて開花のスイッチが入る。いったん咲けばこの暖かさだ。桜花らんまんの風景はすぐそこだろう。

 人間の世界はといえば、感染症との激烈な戦いが続く。願わくば、桜のように街も早く休眠の打破を。いや、これも桜への感情移入が過ぎるだろうか。


3月25日のこよみ。
旧暦の3月2日に当たります。ひのと う 七赤 仏滅。
日の出は6時03分、日の入りは18時21分。
月の出は6時43分、月の入りは19時04分、月齢は0.7です。
潮は大潮で、干潮は高知港標準で0時31分、潮位20センチと、12時42分、潮位28センチです。
満潮は6時43分、潮位165センチと、18時48分、潮位167センチです。

3月26日のこよみ。
旧暦の3月3日に当たります。つちのえ たつ 八白 大安。
日の出は6時02分、日の入りは18時22分。
月の出は7時10分、月の入りは19時58分、月齢は1.7です。
潮は中潮で、干潮は高知港標準で0時56分、潮位26センチと、13時10分、潮位23センチです。
満潮は7時04分、潮位165センチと、19時20分、潮位165センチです。

カテゴリー: 小社会コラム

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