2020.03.24 08:00

小社会 木瓜

 いなかに帰って春彼岸の墓参をした。山の墓地が華やいでいた。あちこちに色とりどりの花が供えられているだけでなく、植えられているボケの紅色の花が満開だったからだ。
 
 中国原産の低木で、漢字で書くと「木瓜」。ウリのような実がなるからというが、花は上品でウメにも似る。ボケと読ますのは正直気の毒だ。牧野富太郎は「モッカ」という読みが転じたと記しており、なおさらである。
 
 文豪夏目漱石はこのボケがお気に入りだったといわれている。小説「草枕」で、木瓜について大した個性がないようなことを述べつつ、主人公に「世間には拙を守ると云(い)う人がある。この人が来世に生れ変るときっと木瓜になる。余も木瓜になりたい」と語らせている。
 
 拙には、つたないという意味があり、漱石は自身の作品でよく描いた主人公のように、不器用ながらも愚直な生き方を好んだとされる。それを身近な植物に重ね、自分も「木瓜になりたい」と表現したところが妙だろう。
 
 彼岸も明け、県内の学校や大学からたくさんの若者が巣立った。来月、それぞれ新しい道に進むが、卒業式の中止で、気持ちを切り替える機会を失った人も少なからずいたようだ。
 
 個性や表現力が重視される時代。不安は尽きないだろうが、不器用でも懸命な人を社会は見捨てないはずだ。ボケは個性がないように見えて人を引きつける。漱石も、そう言いたかったのではないだろうか。
 
 
3月24日のこよみ。
旧暦の3月1日に当たります。ひのえ とら 六白 先負。
日の出は6時04分、日の入りは18時21分。
月の出は6時15分、月の入りは18時10分、月齢は29.5です。
潮は大潮で、干潮は高知港標準で0時04分、潮位16センチと、12時15分、潮位35センチです。
満潮は6時21分、潮位163センチと、18時16分、潮位166センチです。
 
3月25日のこよみ。
旧暦の3月2日に当たります。ひのと う 七赤 仏滅。
日の出は6時03分、日の入りは18時21分。
月の出は6時43分、月の入りは19時04分、月齢は0.7です。
潮は大潮で、干潮は高知港標準で0時31分、潮位20センチと、12時42分、潮位28センチです。
満潮は6時43分、潮位165センチと、18時48分、潮位167センチです。

カテゴリー: 小社会コラム

ページトップへ