2020.03.16 08:35

サバフグ調理が来年から免許制に 鮮魚店困惑「食文化消える」

鮮魚店に並ぶ新鮮なサバフグ。水揚げシーズンの冬場には専門に狙う漁師もいる(中土佐町の鮮魚店)
鮮魚店に並ぶ新鮮なサバフグ。水揚げシーズンの冬場には専門に狙う漁師もいる(中土佐町の鮮魚店)
高知県が簡易資格を検討
 高知県内では自由に調理、販売ができ、鍋やみりん干しなどで食べられているサバフグ(ギンフグ)の処理を免許制に変える条例改正案が県議会2月定例会で審議されている。一般にフグの調理には免許が必要だが、高知県では、毒性が低く以前から食文化として根付いているサバフグなどを免許制度の例外としてきた。免許を持たない鮮魚店などからは「難しい資格ならフグが売れんなる」「食文化が消えてしまう」との声もあり、県はサバフグなどに限定した簡易な免許制度の創設を検討している。

 フグをさばいて有毒部位を取り除いたり、販売したりするには、高知県知事から「ふぐ処理師」の免許を受ける必要がある。しかし高知県の「ふぐ取扱い条例」は規制対象とするフグについて「サバフグとヨリトフグを除く」としている。

 高知県食品・衛生課によると、例外を設けているのは全国でも高知県だけ。1961年の制定当時、この2種を例外とした理由については「おそらく当時の食文化の影響だが、はっきりした根拠は分からない」という。

 厚生労働省によると、これら2種の身や皮、精巣に毒はない。高知県も、県内で水揚げされたサバフグを定期検査し「身と皮の安全性は確認している。肝臓や卵巣では弱い毒性が確認されたこともある」という。

 今回の条例改正は、東京五輪などに備えて政府が食品衛生法を改正した影響。これまでは法的拘束力のない厚労省からの通知を受けて各自治体がフグの処理を規制していたが、食品衛生法施行規則に全てのフグの処理に免許を必要とする内容が明記され、条例も変更せざるを得なくなった。

 高知県東部で50年以上、サバフグの干物を販売している男性(70)は「フグは主力商品で『免許がないから売れん』となれば死活問題だ。常連客にも迷惑を掛けてしまう…」と困惑する。

 高知県水産試験場によると、サバフグは室戸岬周辺の定置網などで年間10~20トンほどの漁獲があり、豊漁だった昨年は100トン以上が水揚げされた。

 高岡郡中土佐町久礼には釣りでサバフグを狙う漁業者もいる。久礼大正町市場で家族が釣ったサバフグを売っている女性は「庶民の魚を取り上げず、売り続けられるようにしてほしい」と訴える。

 中土佐町で鮮魚店を営む田中隆博さん(58)は「サバフグは漁師の生活の糧であり、住民が慣れ親しんだ食材。普段から食べゆうき、(危険ではない)食べ方を知っている」と話す。全国一律の規則で地域の習慣を縛ることについても「独特な食文化にこそ、田舎の豊かさがあるのに。難しい試験を課して漁師のお母ちゃんらが切れん、売れん、となれば食文化が消えてしまう」と疑問を呈す。

 サバフグなどを含めた免許制度は来年6月に始まる。高知県は関係者からの声を受け、サバフグとヨリトフグに限定した免許を創設する方針だ。取り扱い実績がある人を対象に、フグ全般の免許に比べて費用が安く、講習のみで許可するよう検討しているという。(八田大輔)

カテゴリー: 主要政治・経済

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