2020.03.12 08:39

高知市の稲田友加里さん 画家の登竜門「昭和会展」で最高賞

「私の絵の“違和感”に共感してもらえればうれしい」と話す稲田友加里さん(高知新聞社)
「私の絵の“違和感”に共感してもらえればうれしい」と話す稲田友加里さん(高知新聞社)
 シュールな世界観を鮮やかに表現--。高知市大津乙の稲田友加里さん(28)が、歴史ある絵画の公募展「第55回昭和会展」で、グランプリの「昭和会賞」に選ばれた。高知でずっと生活し、絵に取り組んできた若い画家が、中央画壇への“登竜門”で将来性を評価された。

 昭和会展は1966年に東京の日動画廊が創設し、若手作家を発掘、育成するために主催している。中でも「昭和会賞」は、第1回受賞者である高知県宿毛市出身の文化勲章受章者、奥谷博さんをはじめ、中央画壇で活躍する画家を輩出してきた。奥谷さんは今回審査に当たった1人でもある。

 40歳以下を対象にした昭和会展で、国内外の118人の応募の中からグランプリに選ばれた稲田さん。受賞を知った日の喜びをこう振り返る。「電話で知らせを受け、『やっと努力が報われた』と泣いて震えながら家に帰りました。夕飯を食べようとして、どうやってかむのか、のみ込むのかを忘れてしまったと感じるほど、放心状態でした」

 岡豊高校普通科から高知大学教育学部芸術文化コースに進み、土井原崇浩教授に絵画を学んだ。在学中の2013年に独立展に初出品して入選。2017年にいの美術展で審査員特別賞、2018年の県女流展で洋画部門青潮賞に選ばれている。

「春の掟」
「春の掟」
「雨の朝」
「雨の朝」
 今回の受賞作品2点のうち、メイン作品の「春の掟」は「春になると、抜け道のない不安感を覚える。その苦手な気持ちを表現した」。もう1点の「雨の朝」も「雨の日にセットしてもまとまらない髪の毛を苦手に感じて…」。いずれも自身が感じた「日常の中の違和感」を出発点にしている。

 2点に共通しているモチーフの“瞳”も印象に残る。その原点をたどれば、「おじいちゃんが猟で仕留めた野ウサギを木につるしていた。幼い頃にそのウサギの目を見て、怖いと思った体験から」。

 苦手、怖い…。それらの感覚からイメージを自在に膨らませ、シュールな世界観をつくりだしている。

 現在、建築設計事務所に勤めながら絵を描いており、「私のような地方在住の作家が評価された意味も強く感じている。大学時代に熱心に指導してくれ、さまざまな公募展に挑戦するきっかけをくれた土井原教授と、支えてくれた両親に感謝しています」と話す。

 よく「同じ人が描いたとは思えない」と言われるほど、作品によって作風を変えてきた。そうして表現を広げようと自分を試し続け、コンクールに積極的に出品してきた日々が、大きな成果につながった形だ。

 「今まで作品が完成したと感じたことがない。もっと緻密な表現や洗練を取り入れながら世界観を追究し、自分にとっての完成を目指していきたい」とほほ笑んだ。

 第55回昭和会展は18日から30日まで、東京・銀座の日動画廊で開かれる。個展も5月11~26日、高知市桜井町1丁目のギャラリーEで開く予定。(田村文)

カテゴリー: 文化・芸能高知中央

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