2020.03.05 08:00

小社会 啓蟄

 牧野植物園を歩いてみた。例の「咲いています」の札はまだ少ないものの、カンヒザクラや桃の花は見ごろ。野鳥が飛来し、蜜を求めて枝から枝へと忙しい。季節は確かに移ろっている。

 きょうは二十四節気の啓蟄(けいちつ)。土の中で冬ごもりしていた虫たちがはい出す候とされる。〈啓蟄の高々(たかだか)鳥の鳴き過ぎし〉阿部みどり女。地上の虫が動き始めると、上空もにぎやかになって、春らしさが増していく。

 かつての高知新聞に連載「季のうた」にはユニークな句もある。〈三月や俺の腹にも虫居たり〉金子嵩。虫にもいろいろあって地中にいるだけではない。人の体内にも時にかんしゃく玉を破裂させる虫がいる、という解説がつく。

 新型コロナウイルスへの警戒が続く。虫たちの目ざめとは逆に、人間たちは外出にも二の足を踏む「蟄居(ちっきょ)」か「巣ごもり」のような春になった。県内でも多くの学校が休校し、選抜高校野球も開催するなら無観客に。春の風物詩が本来の姿でなくなるのはやはり寂しい。

 政府がクルーズ船対応や唐突な休校要請で批判を浴びている。そんな中、野党や国民の声を聞くべきと注釈はつくが、首相側近の「今は批判や糾弾の段階ではない」という発言が気になった。非常時は政府方針に異を唱えず一致団結せよ、という意味ならば、過去に照らして危うさも感じる。

 腹の虫もうずきそうな制約の春である。人の世界にとって本当の「啓蟄」が待ち遠しい。


3月5日のこよみ。
旧暦の2月11日に当たります。ひのと ひつじ 五黄 赤口。
日の出は6時29分、日の入りは18時06分。
月の出は13時05分、月の入りは2時51分、月齢は10.5です。
潮は若潮で、満潮は高知港標準で3時28分、潮位123センチと、13時46分、潮位124センチです。
干潮は8時42分、潮位99センチと、21時07分、潮位23センチです。

3月6日のこよみ。
旧暦の2月12日に当たります。つちのえ さる 六白 先勝。
日の出は6時28分、日の入りは18時07分。
月の出は14時06分、月の入りは3時47分、月齢は11.5です。
潮は中潮で、満潮は高知港標準で4時23分、潮位138センチと、15時10分、潮位136センチです。
干潮は9時55分、潮位88センチと、22時06分、潮位6センチです。

カテゴリー: コラム

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