2020.03.03 08:36

高知県内の集落営農10年で1.5倍 農業人口減で活動停滞も

 高齢化と後継者不足が深刻化する高知県の農業現場で、集落営農の取り組みが進んでいる。組織数は、2019年10月現在で221。この10年で約1・5倍(79増)となったが、中には活動が停滞してしまった組織もある。

 集落営農は、集落ぐるみで農地を維持する取り組み。機械の共同利用や資材を同時購入し、構成員の年齢に応じて役割を分担し、コスト低減や効率化を図る。収入は均等割りしたり、時間や面積割りだったりとさまざまだ。

 さらに組織を法人化すれば、安定的な農地や資金の借り入れができ、福利厚生の充実など雇用条件も整えられる。高知県内では2009年に初の法人組織が誕生。現在は29まで増えた。

 全国的に集落営農は稲作が多い。高知県は2008年、高知の強みである野菜や果樹などの園芸作物でも収益を上げようと、「こうち型集落営農」を打ち出し、組織化の旗を振った。

 現在、県内30市町村(安芸郡東洋町、安田町、芸西村、土佐郡大川村以外)に集落営農組織があり、高岡郡四万十町が最多の80。四万十市が30、香美市が15、高知市と吾川郡いの町が10で続く。

 ただ、続く農業人口の減少が、既存組織の運営を直撃している。国のデータ(農林業センサス)によると、1995年の高知県内の農業就業人口は5万2291人(平均年齢58・6歳、65歳以上が41・4%)。10年後の2005年には4万134人(62・4歳、53・6%)となり、2015年は2万7161人(65歳、59・4%)に。20年前の半数ほどに減り、高齢化も止まらない。

 「もう限界だ」。そんなつぶやきを漏らす組織もある。

担い手不足進む 近隣連携が打開の鍵
 県内各地で広がってきた集落営農の取り組みだが、中には高齢化や担い手不足に直面している組織もある。

 「ワイワイやれて、えい。山ん中で一人でやりよってみい。気が滅入るき」。高知市鏡梅ノ木。集落営農法人「梅ノ木ファーム」の生永慎一代表(61)が梅の木畑で笑った。

集落ぐるみで農地を守る梅ノ木ファームのメンバー(高知市鏡梅ノ木)
集落ぐるみで農地を守る梅ノ木ファームのメンバー(高知市鏡梅ノ木)
■意欲向上
 29世帯38人が暮らす高知市鏡梅ノ木地区では2009年に集落営農が始まり、2018年に法人化した。現在、30~80代の13人が農地1・6ヘクタールで、梅やイタドリ、杉苗などを栽培。月2回の定例会では数値目標を掲げ、経営戦略を話し合う。2019年末には集落活動センターも開所。生永代表は「みんなで梅ノ木を守るぞ、という雰囲気になった」とうれしそうだ。

 人材育成にもつながっている。川崎昭博さん(33)は2009年に就農。「機械もまとまった農地もなかった」が、梅ノ木ファームの取り組みを通じて技術を身に付けた。「集落営農があったき、農業できゆう」と胸を張る。

 香美市香北町の農事組合法人「ファーム西永野」には20~80代の15人が所属。10ヘクタールで特産の韮生米と青ネギを栽培している。竹村純吉代表(71)は「もっと収益を上げて、若者を雇いたい」と意欲を示す。

 一方、県内の中山間地。約10年前に10人ほどで組織した団体の代表は「人がおらん。限界」。結成後数年は、コメやブロッコリーを16ヘクタールで栽培していたが、メンバーの高齢化や病気で徐々に活動は下火に。近年は1ヘクタールほどを「直接支払制度の査定前に草を刈るばあ」とため息をつく。

 そうした逆境を近隣との連携で乗り越えようという動きもある。

集落の連携を呼び掛ける「四万十農産」の浜田好清代表=右端(四万十町の影野コミュニティーセンター)
集落の連携を呼び掛ける「四万十農産」の浜田好清代表=右端(四万十町の影野コミュニティーセンター)
 高岡郡四万十町の一般社団法人「四万十農産」。影野小学校区の7営農組織のうち、4組織が2017年に3ヘクタールでスタート。現在は26ヘクタールでコメや野菜を作る。農家の病気などで急に管理を任されるケースも多く、浜田好清代表(69)は「集落を超えて守らな、手が回らんなる。皆で連携せないかん」。定期的に地域の将来像を語り合うセミナーも開催し、直販所や農家レストランの整備など夢を膨らませる。「農業から地域をつくる」と、浜田代表は鼻息荒い。

■将来像描け
 高知県の集落営農法人はわずか29だが、全国では法人が主流だ。

 278法人がある山口県。うち、阿武郡の農事組合法人「うもれ木の郷」は、4集落の115人で86ヘクタールを担う。コメや大豆などは、組合員の稼働量に応じて賃金を支払う一方、ほうれん草などの施設野菜は独立採算方式だ。田中敏雄代表理事(69)は「自分で稼ぐ面白さも残すことで、農家も非農家も意欲を高められる」と話す。

 247法人がある島根県。出雲市の有限会社「グリーンワーク」は、5集落90軒がコメやソバの栽培などを行う。同時に「地域貢献型営農」を掲げ、福祉タクシーや弁当の配食を事業化。農地周辺のあぜや法面(のりめん)の草刈りに羊40頭を放牧し、観光客の人気スポットにもなった。

 ただ、解散する営農組織は全国でも増加傾向。受託面積が増える一方で、人手が不足するケースが相次ぐ。農地を一手に引き受けることも多いだけに、組織が倒れれば、地域が倒れることになる。

 こうした状況に、高知県の営農アドバイザーを務める農山村地域経済研究所の楠本雅弘所長(78)=元山形大学農学部教授=は、「各集落が明確な将来の構想を持つことが大事」と呼び掛け、「高知らしさ、各集落らしさを追究することで、永続的な営農組織にしてほしい」とエールを送っている。(香長総局・竹内将史)

カテゴリー: 政治・経済

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