2020.02.24 08:40

「おいしい小説大賞」受賞 作家・古矢永さん「七度笑えば、恋の味」

「子ども2人が寝た後の時間で書いた小説です」と話す古矢永塔子さん(高知新聞社=島本正人撮影)
「子ども2人が寝た後の時間で書いた小説です」と話す古矢永塔子さん(高知新聞社=島本正人撮影)
台所から物語生み出す
 心のこもった食事が人を癒やし、44歳差の恋も呼ぶ--。高知市在住の作家、古矢永(こやなが)塔子さん(37)の小説「七度笑えば、恋の味」(小学館)が今月刊行された。「第1回日本おいしい小説大賞」の受賞作品で、28歳の女性が食を通じて新たな人生を切り開いていく物語だ。

「七度笑えば、恋の味」
「七度笑えば、恋の味」
 「『小説家になる』なんて大それたことを考えて、子どもが寝た後に書いてきた。このコンテストがだめだったら、小説家という仕事をいったんあきらめようと思っていた」

 こう話す古矢永さんは青森市出身。弘前大学人文学部を卒業後、大学で出会った高知県出身の男性と結婚し、高知市内で小学生の子ども2人を育てている。2017年に小説を書き始め、ウェブで発表した10代向けの作品が編集者の目に留まって、2018年に「あの日から君と、クラゲの骨を探している。」(宝島社)でデビュー。

 今回初めて一般向けの小説に挑み、小学館が昨年創設した日本おいしい小説賞で、応募総数160点の中から全員一致で大賞に選ばれた。選考委員は高知市出身の直木賞作家、山本一力さん、「鴨川食堂」シリーズで知られる作家の柏井壽(ひさし)さん、放送作家の小山薫堂さん。

 物語の主人公は、高齢者施設で調理の仕事をしている桐子だ。顔からマスクを外せない秘密を抱えている。公園でトラブルに見舞われた時、彼女を救ったのが施設の入居者で“不良老人”と見られている72歳の匙田さん。彼が手料理を振る舞ってくれたことをきっかけに、桐子は44歳年上のその人に恋心を抱くようになり…。

 作品は7章構成で、章のタイトルは主人公らの心を癒やす料理の名前にした。「漬けトマトの冷やし中華」「きのこづくしのハンバーグ」…。古矢永さん自身が家族に作ってきたメニューも含まれる。主婦として台所に立ってきた営みが随所に生かされ、食の持つ力がテーマの魅力的な物語を紡ぎだした。

 創作の面白さに目覚めたのも、幼かった長女に絵本を手作りしたのがきっかけ。まず10代向けの小説に取り組んだのも「娘が成長したら読んでほしくて」。母親としての思いから出発し、羽ばたいた古矢永さん。次回作として、今度は高知を舞台にした家族の物語を執筆している。(田村文)

カテゴリー: 高知中央高知のニュース

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