2020.02.21 08:37

悩めるスーパー地鶏「土佐ジロー」34歳(4)羽数減が負の連鎖へ

大口農家も規模縮小
 副業で土佐ジローを飼っていた農家が高齢でやめるのは無理もないが、実は大口(千羽以上)の専業に近い生産者も規模を縮小していた。わずか5、6軒だが、ひなの購入は全体の6~7割。いずれも最初は規模拡大に向かったが、壁に当たって方向転換していたのだ。

 9年前、6千羽だった土佐ナチュラルフーズ(旧BGM高知、高知市)は今、3千羽を切り、2千羽にする方向だ。1500羽だった足摺農園(土佐清水市)も300羽弱に。連載第2話登場の嶋崎博子さん(南国市)も10年前は雄雌合計2800羽だったが、今は雌だけ1300羽だ。

 理由はさまざま。ナチュラルフーズは「土佐鴨(かも)」肉の生産に比重を移し、足摺農園は「土佐はちきん地鶏」を飼い始め、最近は話題の巨大鶏「あしずりキング」も。嶋崎さんは「質の向上に特化したい」だった。

   ◇   ◇
 「土佐ジローの壁」については後で書くが、羽数減は高知県土佐ジロー協会の弱体化を招いていた。高知県土佐ジロー協会といっても年収260万円程度。その大半はひな販売の事務手数料(1羽雌80円、雄40円)や卵のギフトケースなどの資材販売だ。

 会長は安芸市・はたやま夢楽(むら)の小松靖一さん(61)。専従職員不在で、事務は「土佐あぐりーど」(高知市)という県内畜産物6次産業化の合同会社に委託。ひな注文への対応や事務連絡を任せている。

 つまり、ひな生産の減少イコール協会の減収となっているのだが、そこへ近年、追い打ちをかける問題が浮上した。土佐ジローのふ化業務の赤字である。

 事情が複雑なので説明するとまず、土佐ジローの種卵は、今も高知県畜産試験場(佐川町)で土佐地鶏とロードアイランドレッドの人工授精を主体に作っている。それがふ化して土佐ジローになるのだが、ふ化率が5~6割と低いのだ。

 そのふ化作業は昔、高知県畜産試験場が担っていたのだが、県庁内で「研究機関の試験場が、いつまでも続けるのはおかしい」と批判が出て民間へ出すことに。だが、受け皿が見つからない。結局2010年6月、高知県土佐ジロー協会が高知市内にふ化場を設けた。しかし、採算ラインは5万羽。最初から赤字で、高知県土佐ジロー協会が理事に借金する事態に。協会内部からは、ふ化業務の高知県畜産試験場への返上の声も出始めた。

 すると2013年6月、思わぬ展開が起きた。高知県畜産振興課の課長補佐だった日浦千尋さんが早期退職して土佐あぐりーどを設立。はちきん地鶏のふ化もするので、土佐ジローも一緒にふ卵器に入れて、採算性を上げてくれることになったのだ。

 救いの神だったが、もともと採算割れの上に、高知県畜産試験場から来る種卵のふ化率は低迷。2017年2月は33%。にもかかわらず種卵代は全個分の支払い。さらに、ふ卵器の老朽化で修繕費も発生。土佐あぐりーどは「ジローの負担が大きすぎて継続は難しい」と音を上げた。

 このため、高知県土佐ジロー協会は赤字分を補填(ほてん)。2018、19年度で計約130万円出したが、所帯が小さいだけに財政ピンチ。その結果、「もし、協会の貯金がなくなって補填不能になると、ジロー生産が止まるというわけです」と小松会長は恐ろしいことを口にした。この取材を始めた直後、昨夏の話である。(編集委員・掛水雅彦)

カテゴリー: 社会土佐ジロー34歳経済

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