2020.02.19 08:25

悩めるスーパー地鶏「土佐ジロー」34歳(2)卵 東京で1個192円!

カリスマシェフの一夜限りのディナーイベントで、食材ナンバーワンの評価を得た嶋崎博子さんの卵と記念のトロフィー(南国市内の作業場)
カリスマシェフの一夜限りのディナーイベントで、食材ナンバーワンの評価を得た嶋崎博子さんの卵と記念のトロフィー(南国市内の作業場)
肉 こだわる姿に称賛
 評判の土佐ジローだが、羽数減で最近、高知県内でもあまり卵を見かけない。あっても値段はバラバラ。1個当たりの税込み価格は、直販所で50~65円。スーパーで最高87円。高知市土佐山地区では100円。日高村では110円。生産者によって飼料や飼育方法が異なるためだ。都会のデパ地下では昔から100円+税が相場と思っていたら何と192円を見つけた。

 それは東京の高級スーパー「紀ノ国屋」の青山店。6個入りで税込み1155円。パッケージは丈夫な紙製で、開くと卵は木毛(もくめん)に包まれ、まるで贈答用だった。

 その生産者は南国市の嶋崎博子さん(56)。数軒しかない土佐ジローの専業農家だ。元は美容師だが、父の病気で「食」に目が向き、土佐ジローにのめり込んだ。飼育歴12年。研究熱心で、成長に応じて3段階で餌を変える。樹皮から採った炭と木酢液を混ぜ合わせたものやEM菌を与え、鶏の健康に気を配る。

 そんな訳で嶋崎卵はデビュー当時から地元で1個70円。当時は50円が普通で周囲を驚かせたが、「それだけの育て方はしている」と信念を貫き、今も改良を重ねている。紀ノ国屋への納入自体がステータスだが、2019年5月にはすごい勲章を手に入れた。それは、大手クレジット会社が最上級カード会員だけを招く、カリスマシェフの一夜限りのディナー。参加費5万円(税別)の料理の中で嶋崎さんの卵が使われ、食事客による人気投票で全食材の中、1位になったのだ。

 シェフは東京のレストラン「SUGALABO(スガラボ)」の須賀洋介さん。フレンチの巨匠、故ジョエル・ロブションのまな弟子で、完全紹介制の超人気店を経営する傍ら、食材探しにも力を入れている。

 嶋崎さんは振り返る。「とびきりの生ハムや牡蠣(かき)もある中、脇役の卵が。まさかですよね。あの夜は眠れませんでした」

 一方、肉は限界集落の安芸市畑山で土佐ジローを育てて31年、雄の若鶏肉を極めた「はたやま夢楽(むら)」の小松靖一さん(61)だ。前回紹介した大阪・鶏(けい)太郎の超高級肉は小松さんの品。限界集落でこだわりの肉生産をする小松さん一家に対しては、中央のメディアも関心が高い。2019年終盤には東京から二つのテレビ局が取材に来た。

 その一つ、テレビ朝日系「食彩の王国」の古屋徹ディレクターは理由をこう語る。「料理人に渡して、その後は知らない生産者が大半の中、自ら経営する宿で1枚ずつ丁寧に焼いて、正しい食べ方まで指南する。そこまで自分の食材に思い入れを持って広めようとしている人はなかなかいません」

 そして先日も、東京の高級焼き鳥店「バードコート」の野島康之さん(57)らが畑山を訪問(2月6日付朝刊掲載)。「間違いなく最高級。ジローに人生を懸けているのが伝わってくる。小松さん夫婦に会いたくて来たんです」と絶賛した。

 にもかかわらず生産が減る。原因は農家の高齢化と飼料の高騰だった。(編集委員・掛水雅彦)

カテゴリー: 政治・経済土佐ジロー34歳香長経済

ページトップへ