2020.02.13 08:40

ただ今修業中 高知市長の随行秘書 山本美咲さん(28)

岡﨑誠也市長の公務に随行する山本美咲さん(高知市役所)
岡﨑誠也市長の公務に随行する山本美咲さん(高知市役所)
市長と若手 つなげたい
 先を読む能力や機転が求められる仕事だ。高知市役所の秘書課員、山本美咲さん(28)は岡﨑誠也市長が出席する庁外の会議、式典に同行する「随行秘書」を務めている。

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 1月末のある日は、市内にあるホテルの3階で企業のパーティーが、5階でも起工祝賀会が同じ午後6時から始まった。ともにあいさつを依頼されていた高知市長。事前調整で時間をずらしていたが、ホテル到着がやや遅れ“かぶる”可能性が出てきた。

 山本さんは市長をまず5階に送り届けると、3階へ急いだ。担当者に事情を説明して、あいさつの順番を後ろに回してもらう。5階にとって返すと市長があいさつを終えるのを見計らい、エレベーターにさっと乗り込ませた。3階に着き、会場のドアを開けて座席を伝える。ぎりぎり間に合った。「良かったです」。胸をなで下ろした。

 高知市出身。学芸高校から「一度は外から高知を見たい」と都内の大学に進んだ。4年生になり、同級生は有名企業を目指して就職活動にいそしむ。だが同じような選択は「あまりピンとこなかった」。帰省のたび、自然豊かで人も温かい古里の良さを再認識していた。「地元を元気にしたい。高知を良くしたい」と2013年に市役所入り。昨年、秘書課への異動と同時に随行秘書を任された。

 市長がこなす公務は年間千件近い。スケジュールを伝える際には、あいさつの有無や市長の役回り、主催や共催など市が関与する度合いも説明する。現場では受け付けを済まして、市長にリボンを着け、写真を撮りながら後方で待機。そうした準備や立ち振る舞いが身に付くのに2カ月近くかかったという。

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 「攻めるタイプ」を自認する。入庁後4年間は防災分野に携わった。海抜ゼロメートル地帯で「津波から逃げる場所がない」と悩む市民と地域内を回り、建物の所有者を説得。1年間で担当地区の100カ所ほどを避難ビルに指定した。それに比べて秘書業務は「守り」。市長のペースに合わせつつ、一歩引いた黒子役を求められる。「一番苦手な部分なんです」と苦笑い。当初は「私なんかより向いている人はいるのに…」と思い悩んでいた。

 高知市役所の随行秘書は20~30代の若手が選ばれ、1年で交代するのが通例。ところが会議などで顔を合わせる行政、民間の“同業者”はベテランが多いという。「私みたいなペーペー」が随行秘書を任された意味を、考え続けてきた。

 この1年間、意思決定や政策が実行されるまでの過程など、トップの仕事を間近で見てきた。今後は自分の経験を同世代の職員らにも伝えて、「大げさに言えば、市長と現場をつなぐ役割ができれば」と考えている。県と市、役所と民間、部局間などにある「見えない壁を取り払いたい」という。

好きな言葉〈意味〉1人が100人分頑張ることも大切。皆が力を合わせて1歩前進することも大事。
好きな言葉〈意味〉1人が100人分頑張ることも大切。皆が力を合わせて1歩前進することも大事。
 岡﨑市長は「若いうちに全体の仕事を俯瞰(ふかん)して、優先順位の付け方や、本質を見抜く力を養ってもらえれば」とエールを送る。山本さんは「今でも苦戦してます。本当に、ただ今修業中なんです」と笑うが、そうした日々が成長の糧になる。そう信じ、前を向いている。

 写真・反田浩昭
  文・浜崎達朗

カテゴリー: 社会高知中央


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