2020.02.11 08:50

県内の衰退商店街に光明!?いの町で出店の波じわり 5年で10店

昨年9月に商店街に新規出店した喫茶店「GOOD FIVE」(いの町)
昨年9月に商店街に新規出店した喫茶店「GOOD FIVE」(いの町)
 高知県内各地の昔ながらの商店街でじわり、新規出店が増えている場所がある。長年、大型スーパーの出店や後継者不足といった逆風にさらされてきたが、社会の潮目が変わりつつあるのだろうか。 

 2019年9月、吾川郡いの町の中心商店街の西側、「いの大国さま」(椙本(すぎもと)神社)近くに喫茶店「GOOD FIVE」がオープンした。2017年からいの町の地域おこし協力隊員を務める、小野義矩さん(35)が週2回営業(月、土曜)している。地元特産のショウガをたっぷり使った、スパイスカレーを提供。見栄えも良く、若い女性客らに人気だ。

 小野さんは、仁淀川や大国さまの知名度に加え、「いの町特産のショウガとか仁淀川の伏流水とか。商品にストーリー性を持たせやすい」。会員制交流サイト(SNS)でも情報発信しており、「8割以上は町外のお客さん。店の認知度も上がり、(協力隊を終える)4月以降もやっていけそう」と手応えを口にする。

 昭和30年代、旧伊野町の中心商店街は靴店や美容院、薬局、菓子店など160店舗ほどが軒を連ねる、町のメインストリートだった。

 だが1968年、少し離れた場所に国道33号が開通すると、人の流れが変わった。近隣に大型スーパーも開業し商店街は徐々に衰退。2004年の市町村合併時には90店舗に減り、以降もくしの歯が欠けるように、のれんを下ろす店が続いた。一方、新規出店は「ほぼゼロ。あっても5年に1軒あるかないか」(いの町商工会)の状況だったという。

 それが一転。ここ5年ほどで、小野さんを含め、カフェや雑貨店など新たに10店舗がオープン。若者が足を延ばすようにもなった。地元商店主は「ここ数年で、活気が少し戻ったような感じ」と顔をほころばせている。

 何が出店を後押ししているのか。周辺を探った。

いの町の中心商店街で今年初めて開催された走り初め。各地の商店街で人を呼び込むための模索が続いている(同町)
いの町の中心商店街で今年初めて開催された走り初め。各地の商店街で人を呼び込むための模索が続いている(同町)
新規出店に追い風 チャレンジ制度、SNS活用 あえて脱高知市も

 吾川郡いの町の中心商店街では、ここ5年ほどの間にカフェや雑貨店など新たに10店がオープンした。ほかの自治体でも、新規出店が続く商店街があるという。

 まずは、いの町の背景から見てみよう。

 いの町では2013年から若手のいの町商工会員を中心に、中心市街地の活性化策を協議。翌年から特産のショウガをPRする食イベント「いの生姜(しょうが)焼き街道」などの取り組みが始まった。一方で、「新規出店時に使える空き店舗が分からない」「開業する際の支援がほしい」といった声が出ていた。

 いの町商工会は、空き店舗の家主ら十数人を訪ねて賃貸可能な店を洗い出し、2015年には上限5万円の家賃補助制度(最長2年)を創設した。

 出店希望者を仲介したいの町商工会職員の宮脇大介さん(47)は「街を盛り上げたいという機運の高まりと支援がうまくマッチした」。現在、中心商店街では66店舗が営業中。取り組みがなければ、さらに少なくなっていた可能性は大だ。

 併せて周辺の店主らも「ついでに、他の店に足を運んでくれる人もいる」と刺激を受けている様子だ。

■活用して独立
 四万十市の天神橋商店街では、2010年に31だった振興組合加盟数が現在は36になった。3店が閉店し8店が商店街に仲間入りした。うち4店が県のチャレンジショップ制度を活用してからの独立組だった。

 「チャレンジショップ制度」は、高知県が2011年度に始めた取り組み。各地の商店街組合などに補助し、半年から1年といった期限付きの格安料金(月額数千円~1万円ほど)で空き店舗を貸し出している。

 昨年3月、天神橋商店街にカツオのたたきなど水産加工品の店を出した宮地伸広さん(51)も独立組。「(チャレンジショップ制度は)家賃も安く、大きな失敗をしないという安心感があった」と話し、「お客さんに顔を覚えてもらい、人の流れも分かった。独立への見通しは立てやすかった」。

 高知県によるとこれまでに県内12自治体が制度を利用し計79組が挑戦。卒業後に21組が、それぞれの地域で出店している。

■わざわざ来て
 県都・高知市の近隣市町村では、別の要因もあった。香美市土佐山田町の商店街では、この3年間で11店が新規開業。うち、2018年秋にえびす商店街で「ナッツバター」の店を始めた20代女性は言う。

 候補地は「あえて高知市を外した」。人口の多さは魅力だが、店舗数が多いだけに埋没する心配も。そこで「お出掛けも楽しみ、わざわざ来てもらうことを考えて」選んだのがえびす商店街だった。

 香美市商工会によると、新規出店はこだわりのコーヒー店など特徴のある店が多い。潜在的なターゲットに向け、店側が情報を会員制交流サイト(SNS)でPRできるようになった時代背景も、出店の追い風になっているようだ。

 ただ、商店街の縮小傾向は続きそう。高知県商店街振興組合連合会も「右肩下がりの感覚」とし、「イベントなどを通じ、まずは商店街に人を呼ぶ取り組みが必要」とする。いの町の商店街では今年初めて「走り初め」を行ったほか、新規出店者らをインタビューで紹介するチラシも作成。広報誌と合わせて配布している。

 身近な商店街のにぎわい復活へ、あの手この手の取り組みが続く。(土佐支局・山崎友裕)

カテゴリー: 社会高知中央

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