2020.02.01 08:35

規制緩和で逆に運用厳しく…農家も「大型特殊免許」必要に

作業機付きのトラクターの公道走行。免許を取得した男性も胸中は複雑だ(高知市内)
作業機付きのトラクターの公道走行。免許を取得した男性も胸中は複雑だ(高知市内)
現場からは困惑の声
 トラクターの公道走行を巡る2019年4月の規制緩和に、高知県内農家が戸惑っている。これまで黙認されていた「作業機付きの走行」が、規制緩和の中で逆に厳しく運用されることになり、大型特殊自動車免許の取得が必要になったからだ。県内で取得できる場は限られており、農家から困惑の声が上がっている。

 道路運送車両法によると、従来からトラクターのみの公道走行はできた。ただ、後部に耕運機などを付けた場合は、方向指示器などが見えづらいなどの理由から2019年4月まで認められていなかった。

 法に従えば、耕運機を別の車で運んで農地でトラクターに付けなければならない。しかし実際は付けたままの公道走行は広く行われており、「大半の農家は法令の認識がなく、普通に行われていた」(関係者)。高知県警も「過去に取り締まった実績はない」という。

 こうした中、政府の規制改革推進会議は、農作業の効率化のために、作業機付きのトラクター走行を認める方向を提示。国は昨年4月、方向指示器を見えやすくするなどの条件付きで走行を認めた。

 ただ、作業機を付けた状態で車幅が1・7メートルを超すと、道路交通法では「大型特殊自動車」に区分され、走行には大型特殊免許が必要になった。“グレー状態”で公道を走っていた農家にとって「規制緩和により締め付けが強まる」という皮肉な展開に。

 国は、各メーカーが作業機付きでも見えやすい方向指示器などを販売し始めた2019年秋ごろから本格的な周知をスタート。免許が必要だと高知県内農家が知ったのもそのころになってからで、自動車学校などに殺到している。

 県内で大型特殊免許の取得に対応した自動車学校は7カ所。受講に10万円近くかかるものの、どこも「4月すぎまで定員いっぱい」の状態が続く。

 高知県運転免許センターは1月、農耕車限定の大型特殊免許試験(4050円)を導入。2月までの受験者16人を募集したところ、約110人の応募が殺到したという。

 高知県運転免許センターは「人員的な制約があり、試験頻度も受験者も増やすのが難しい」と話す。しかも、センターでのいわゆる“一発試験”は合格率が低い。1月は8人が受験し、合格はわずか1人という。

 この状況に、高岡郡佐川町の男性(69)は「規制緩和の前になぜ周知してくれなかったのか」と非難。「田んぼも畑も免許が取れるまで放っておけん。まじめに百姓しよったら捕まるなんて、たまったもんじゃない。せめて猶予を」と訴える。

 1月の試験で唯一合格した高知市の男性(50)は「これで安心して運転できる」と胸をなで下ろし、「他の農家も早く免許を取得できるようにしてほしい」と複雑な表情を浮かべた。

 県は「JAや県警などとさらに協議し、速やかに免許取得に向けて対策を講じたい」としている。(五十嵐隆浩、森田千尋、板垣篤志)

カテゴリー: 社会主要

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