2020.01.21 08:45

安芸市の統合中学校舎に瓦屋根 是か非か 高額でも維持費安価

安芸市が建設を予定する統合中学校のイメージ図
安芸市が建設を予定する統合中学校のイメージ図
業者「落下の危険は誤解」景観にも配慮
 高知県安芸市が新築する統合中学校で、屋根に安芸市特産の「安芸瓦」を使用する方針だ。地域の特色を打ち出し、周辺の景観と調和させる狙い。議員や住民からは地震による落下の危険やコスト高を懸念する声も上がるが、市や製造業者は瓦の経済性や安全性に「誤解がある」と訴える。果たして、学びやの瓦屋根は是か非か。他市町村の動向と併せ探った。

 新中学校は安芸市立安芸中安芸(安芸市西浜)と清水ケ丘中安芸(川北甲)を統合し僧津地区に建設する。2023年4月の開校を目指し、2021年度に着工予定だ。設計業者は2018年12月に公募型プロポーザル方式で決定。4社中2社が瓦屋根のデザインを提案し、そのうちの1社が選ばれた。

 住民を交えたワークショップなどを経て、今は実施設計中。安芸市によると、校舎の屋根約2310平方メートルを切り妻屋根とし、うち約2200平方メートルで「安芸瓦」を採用、残り約110平方メートルは金属製の屋根材を使う方向だ。

 ただ、昔ながらの屋根瓦が各地の震災で崩れ落ちているのも事実。昨年の市議会12月定例会では議員から「地震時に耐えられるのか」「避難場所として活用できるよう平らな屋根にすべきでは」「平らな陸屋根(ろくやね)にした方が安くすむ」など疑念、指摘が相次いだ。

 高知新聞社が県内34市町村に聞き取った結果、現在、瓦屋根の小学校は6市町村14校(全189校)、中学校は4市町村9校(全105校)=国私立、義務教育学校除く。「今後建設時に瓦屋根を検討するか」を尋ねても、消極的な意見が大多数を占めた。

 潮流にあらがうかのような安芸市の瓦採用。ただ、県教委学校安全対策課は「学校屋根の形状や素材に明確な指針はなく、落下防止対策さえ十分なら問題ない」とする。

 市町村や瓦製造業者への取材をさらに進めると、必ずしも瓦のコストや危険性が高いとは言えない、学校屋根事情も浮かび上がってきた。


瓦の安全性を強調する長野瓦の長野雄一さん(安芸市庄之芝町)
瓦の安全性を強調する長野瓦の長野雄一さん(安芸市庄之芝町)
落下防ぐ工法進化
 「地震や台風で落ちる」「費用が高くつく」―。安芸市が統合中学校で採用する方針の瓦屋根には、そんなイメージがつきまとう。だが、製造業者は「巨大地震にも耐えうる」と瓦の「進化」を強調。コスト面でも市は「長い目で見れば瓦は安い」と理解を求めている。

弱点克服
 「うちでは今後は瓦屋根を使用しない方針」。南国市教育委員会の担当者はきっぱり話す。南国市では長岡小学校と岡豊小学校、久礼田小学校の3小学校が瓦屋根。2019年は強風時に長岡小学校で瓦がめくれ、落ちかかったという。一方、同じく瓦屋根の学校がある高知市や吾川郡いの町などは「強風時に瓦が落ちたという話は聞かない」。

 安芸市庄之芝町で瓦製造施工を手掛ける「長野瓦」の長野雄一さん(42)は「落下の危険性は施工した年や工法によって異なる。今の工法では瓦屋根の弱点はほぼ克服されている」と説明する。

 長野さんによると、台風や地震で落下する瓦は、くぎ打ちなどの固定が十分ではない。阪神淡路大震災以降、瓦業界では落下被害を防ぐ工法のガイドラインを策定。長野瓦でも全ての瓦をくぎ2本で打ち付けるなど安全性を強化した。

 瓦の重なる部分に特殊な凹凸を付け、固定し合うことで落下を防ぐ「防災瓦」も採用。長野さんは「耐久試験も行い、震度7にも耐える強度が保証されている」と強調する。

最終的に得!?
 では、費用はどうか。安芸市の試算によると、統合中学校で日本瓦を使用した場合は4050万円。対して平らな陸屋根(ろくやね)は2800万円と、1250万円も安価だ。しかし、安芸市教育委員会の担当者は「できるだけ平らな屋根は無くしたい」。理由は、雨漏りの多さだという。陸屋根は防水シートで雨漏りを防ぐのが一般的だが、太陽光などによる劣化が避けられない。

 瓦屋根採用には消極的な県内自治体の多くからも、「陸屋根の雨漏りに悩まされているのは事実」「補修が大変」との声が上がる。土佐市の新居小学校は雨漏りが原因で、10年ほど前に陸屋根の上に瓦屋根を増設した。

 安芸市は「初期費用は瓦が高いが、維持費も含めれば最終的には得と考えている」と説明。50年間の維持費を瓦屋根3600万円、陸屋根5700万円と見込む。

 屋上を避難場所として活用できなくなるとの指摘には、「建設地は津波浸水区域外。屋上への避難は考えていない」。その上で「想定外」の被害を懸念する住民の意見にも配慮。瓦屋根部分を約150平方メートル減らし、避難スペースとなる約540平方メートルの陸屋根を確保するという。

安芸らしさ
 安芸市が瓦屋根にこだわる最大の理由は景観だ。建設地近くには国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている「土居廓中」がある。藩政時代の面影を残した町並みの観光スポット。統合中学校の設計業者も「瓦屋根は安芸市の風情にマッチする。時間を経るごとに風合いも増す」と自信を示す。

 景観面については県内の他自治体からも「瓦が特産の安芸らしくていい」「住民に愛着を持ってもらえそう」と肯定的な意見が目立った。「通いたいと思われる学校にしたい」とする安芸市。瓦にかける思いは、市民に伝わるか。(安芸支局・森部智成)

カテゴリー: 社会主要安芸


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