2020.01.20 08:00

【高知市文書偽造】重い「不起訴不当」の議決

 高知市はなぜ、公文書を偽造したのか。今も晴れない多くの市民の疑問に沿った議決ではないか。
 高知市南部の「道の駅」構想に絡む都市計画マスタープランの決裁文書を偽造した問題。虚偽有印公文書作成容疑などで書類送検された岡﨑誠也市長らが不起訴処分となったことに対し、高知検察審査会は不起訴不当を議決した。
 これを受けて高知地検は再捜査する。公文書のずさんな管理は行政への信頼を失墜させる。市は重く受け止めるべきだ。
 高知市は2014年のマスタープラン策定時に必要だった内部の決裁文書を作成していなかった。2016年1月になって、2014年3月時点の日付でプラン策定の起案文書を作成。岡﨑市長や当時の担当者ら19人から決裁印を取って市議会に提出した。既に退職していた者にも、在職時の肩書で押印させていた。
 市民らの告発を受けて県警は昨年、19人を虚偽公文書作成・同行使の疑いで書類送検。高知地検は全員を嫌疑不十分で不起訴とした。これに対し、検察審査会は「一般人には全く理解しがたい。犯罪性が深く疑われ、悪質だ」として地検に再考を求めた。
 岡﨑市長は決裁文書の作成が抜かった点は反省している。一方でマスタープランの内容を承認した2014年時点で、「事実上の決裁」はされていたと主張。事後決裁の文書も決裁権者の市長が作成し、内容にも虚偽はないのだから、偽造には当たらないとする。
 しかし、そもそも地方公共団体の事務は、文書によって処理されるのが大原則である。文書のない「事実上の決裁」がまかり通れば、原則が揺らぐ。事実と異なったり行政に都合がよかったりする公文書が、作り放題になる恐れも拭えない。
 市は「違法性はない」の一点張りだが、自分たちのミスを市民に分からないように取り繕うのは「隠蔽(いんぺい)」であり、市民への背信行為だろう。これが許されるなら、市はまた同じ事を繰り返しかねない。行政の誠実さ、公正さが問われている。
 地検が不起訴の理由を十分説明していないことも、検察審査会の判断に影響したのではないか。
 「事件の重大性や悪質性、告発人への配慮などを考慮し、処分理由について説明する必要はないと判断した」とする。これだけでは納得しづらい。裁判員裁判など司法制度への国民の理解が重視される時代である。検察にももっと説明を尽くす姿勢があっていい。
 公文書のずさんな管理は、「桜を見る会」の招待者名簿の扱いなど安倍政権でも顕著に見られる。政策決定の過程を検証できる公文書をないがしろにする行政が、国、地方を問わず広がっているとしたら、もはや法治国家とは言えなくなる。
 岡﨑市政はいま一度、決裁文書の偽造問題に向き合い、誰の発案だったのかなど経緯について説明責任を果たしてもらいたい。

カテゴリー: 社説


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