2020.01.16 08:38

ただ今修業中 書店員 山口芽衣さん(23)高知市

いち押しの文庫本をアピールするため、レースの布や手描きのイラストで「ポップ」を作り、売り場に飾る山口芽衣さん(高知市のTSUTAYA中万々店)
いち押しの文庫本をアピールするため、レースの布や手描きのイラストで「ポップ」を作り、売り場に飾る山口芽衣さん(高知市のTSUTAYA中万々店)
本との赤い糸結びたい
 本が好きな人にとって、本屋で過ごす時間は楽しいものだ。高知市のTSUTAYA中万々店。売り場を歩けば、手描きのカードなどでお薦めの本を宣伝する「ポップ」が目を引く。書店員はフレーズやデザインに工夫を凝らしてポップを作る。
 
好きな言葉
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 「この本は面白いと思ったら、何としても売りたくなる。『絶対に損はさせません』という気持ちで、ポップ作りを頑張ります」。そう話すのは、入社2年目で「文庫文芸」を担当している山口芽衣さん(23)。
 
 この日は山口さんのいち押し本「泥棒猫ヒナコの事件簿 あなたの恋人、強奪します」のポップが仕上がった。「アクションあり、ミステリーあり、“ほっこり”もあり。男女問わず読んでほしい」と話し、レースの布やピンクの絵の具などを使い、美しい正義のヒロインの小説をアピールした。
 
 「本との出合いを求めている人に『おっ』と立ち止まってもらいたい。売れなかった本がポップを作って、売り上げが上がる。書店員が『よしっ』とガッツポーズする瞬間です」
 
 ◆
 
 山口さんは「本に触っているときが幸せな時間」という本好き。とにかくたくさんの本を読みたくて、小学生の頃は朝7時に登校して本を開き、休み時間も読書にふけった。今もジャンルを問わない多読派で、「つらいことがあっても面白い本に出合った瞬間、ストレスが解消される。本は現実じゃ行けない世界に連れて行ってくれる“人生の師匠”です」と笑う。
 
 本屋という場所も好きだった。「店ごとに雰囲気が違うので、学生時代は高知市内の本屋をはしごして回った。店の自動ドアが開くと、ふわーっと紙の匂いがする。『いい匂い。最高!』と思っていた」。岡豊高校を卒業後、専門学校で製菓を学んだが、就職先に選んだのは「やっぱり本屋」だった。
 
 開店直後の朝8時。スタッフが作業するバックヤードには、配送されてきた新刊本や雑誌が詰まった段ボールが山積みだった。手分けして箱を開けて、ジャンルごとに仕分けしていく。

 山口さんは「段ボールとのたたかい。体力勝負です」と、本を載せた重い台車を押して「文庫文芸」の売り場へ。棚のあるべき場所に一冊ずつ並べていくうち、店内が客でにぎわうようになり、接客しながら合間を縫ってポップ作りにもいそしむ。

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 TSUTAYA中万々店の喜多直和店長(46)は「ネット書店で注文すれば手元に本が届く時代。来店してもらえる独自性を出すには“人”だと思う。スタッフがお薦めした本を手に取ってもらい、読んでもらって、面白いと感じてもらう。その積み重ねが信用になり、『このスタッフが薦めるから、この本を買おう』という形になるのが理想です」と話す。
 
 書店員がポップの個性を競い合っているTSUTAYA中万々店において、山口さんが「師匠」と慕う先輩がいる。TSUTAYA中万々店が発行している「なかましんぶん」編集長で、入社13年目の山中由貴さん(39)。小さなカードから始まった山中さんのポップは、本の魅力を伝えようとするうちに立体化し、アート作品のように楽しめる同店の名物になっている。
 
 山口さんは言う。「師匠の発想は何て自由なんだと、いつも驚かされる。お客さんから電話が掛かってきて、山中さんとおしゃべりしながら本を選びたいという指名もある。私が追い掛けたい、大きな背中です」
 
 本を愛する“本の虫”だから、書店員になった。「私が出合ってきたように、お客さんにも本との“運命の出合い”をしてほしい。本と人との赤い糸を結びたい」とほほ笑んだ。
 
 写真・久保俊典
 文・田村文

カテゴリー: 社会高知中央


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