2020.01.16 08:00

【桜を見る会名簿】知る権利を踏みにじるな

 行政文書について公文書管理法1条は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」とする。
 この条文は、ただの掛け声倒れだったのか。意図的のようにも見えるずさんな政府の文書管理にあきれるばかりだ。国民の「知る権利」が踏みにじられている憤りさえ覚える。
 安倍晋三首相主催の「桜を見る会」招待者名簿を巡って、政府の行政文書の不適切な取り扱いが次々と明らかになっている。
 菅義偉官房長官は、昨年11月に内閣府が同会の名簿を国会に提出した際、推薦した部局名の一部を隠す加工があったと明らかにした。
 その部局は「内閣官房内閣総務官室」で、提出の数日前に政府側が同室の推薦名簿は「廃棄済み」と答弁していたため、その整合性を取るために加工したとみられる。
 野党の追及本部会合で内閣府の関係者は、招待者を最終的に内閣府が推薦する形だったため、「元の部署名が残ったら紛らわしい」と考えて消したと話している。
 だが、これは身勝手な言い訳だ。紛らわしいかどうか判断するのは国民で、つじつまが合わなければ国会などで追及されるだけだ。「虚偽」の資料が出されては国会での行政チェックは難しくなる。
 同会には近年、安倍首相の地元後援会員が多数招かれ、「私物化」しているなどと批判された。内閣府が取りまとめていた昨春の招待者名簿は、会の終了直後に廃棄されたと政府は説明している。
 だれが招待者を推薦したかが注目される中、部局名を消す行為は、政権に都合の悪い文書を国民に隠しているようにも映る。
 公文書管理法は、文書の名称や保存期間などを行政文書ファイル管理簿に記載するよう定めている。だが、2013~17年度の5年間、内閣府は同会の招待者名簿を記載していなかった。
 また、廃棄する際は首相(実務的には内閣府の担当課)の事前同意が義務付けられているが、同意も経ずに廃棄していた。
 こうした公文書の管理について菅氏は「11年、12年の取り扱いを前例として、漫然と13年以降も引き継がれてきた」とした。しかし、民主党政権時代の両年は東日本大震災の関係で同会は開かれていない。
 責任転嫁するような姿勢からは、公文書の取り扱いで法律違反をしたという反省は見えない。菅氏は廃棄したとする招待者名簿の再調査を拒否し続けており、これも国民の不信感につながっている。
 共同通信社の先日の世論調査で、同会の疑惑に関して、安倍首相が「十分説明していると思わない」とする回答が8割を超えた。
 通常国会が20日に召集される。統合型リゾート施設(IR)の汚職事件や海上自衛隊の中東派遣などさまざまな問題があるが、「桜」をうやむやのままに終わらすわけにはいかない。安倍首相はきっちりと国民に説明する責任がある。

カテゴリー: 社説


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