2020.01.14 08:00

【カジノ汚職疑惑】IR事業の正当性を疑う

 安倍政権が成長戦略の目玉と位置づける、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件の疑惑が拡大している。
 発端は、IR事業への参入を目指す中国企業から現金や利益供与を受けた収賄容疑で、自民党の秋元司衆院議員が東京地検特捜部に逮捕された事件だった。
 その後、中国企業側は調べに対し、秋元容疑者以外にも衆院議員5人に現金を渡したと供述。現金提供の記録を文書の形で残していたことが判明した。
 当初、5人は疑惑を全面的に否定した。ところがそのうちの1人、日本維新の会の下地幹郎衆院議員が、「2017年10月に那覇市の選挙事務所で現金を受け取った」と事実関係を認めた。
 秋元容疑者に現金が渡った時期とも重なる。中国企業側の残した文書の信用性を裏付けるといえるだろう。秋元容疑者と残る4人は、かたくなに容疑を否認しているが、おいそれとは信用できまい。
 下地議員は除名処分となったが、維新の会代表の松井一郎大阪市長は議員辞職が相当だとの認識を示した。一見、厳しく見えるが、維新の会はIR事業に一貫して推進の立場を取ってきた。代表としての見解の表明があってしかるべきだ。
 カジノ汚職を巡る疑惑は、まだ入り口に立ったばかりだ。特捜部には疑惑の全容解明に全力を挙げてもらいたい。
 不可解なのは、これだけ疑惑が膨らんでいるのに、安倍政権の中枢がそっぽを向くような態度を取っていることだ。首相は年頭会見でこの問題に触れず、菅義偉官房長官にいたっては「今回の事件とIRとは次元が違う」と述べた。
 事件の影響を最小限に見せようとしているのだろう。だがカジノを含むIRは整備地域や事業者の選定などで、巨大な利権が絡む事業である。事件は事業と別物ではなく、むしろ本質に近い。
 こうした中、政府はカジノ規制を担う管理委員会を先日、予定通り発足させた。運営事業者を監督し、マネーロンダリング(資金洗浄)やギャンブル依存症対策も担う。
 事業者への免許付与に当たっては、事業者の財務状況や反社会勢力との関係を調べるという。不正はあってはならないが、カジノ運営にはそれだけ大きなリスクが伴うということだろう。粛々と手続きを進めるより、立ち止まって考えてみるときではないか。
 20日から始まる通常国会は、そのいい機会だ。野党は共同でカジノ営業を禁じる法案を提出する方針だ。この際、あらゆる角度から課題を検証する論戦を期待したい。
 逮捕された秋元議員はIR担当の内閣府、国土交通省の副大臣を務めた。キーマンと業者の癒着が疑われ、政界工作のカネも一部とはいえ露見した。国民の疑念も膨らんでいる。問われているのはIR事業の正当性にほかならない。 

カテゴリー: 社説


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