2019.12.01 08:00

【子ども貧困対策】実態把握し素早く支援を

 子どもの貧困対策の政府の基本方針である大綱が5年ぶりに見直された。
 これまでは「ひとり親家庭の貧困率」「生活保護世帯の大学進学率」など25項目を改善指標に設定していた。よりきめ細かく貧困家庭の実態を捉えようと、「ひとり親の正規雇用の割合」「公共料金の滞納経験の有無」などを指標に加え、計39項目とした。
 さまざまな状況にある貧困家庭の実態は外からは見えにくい。多くの指標があれば、公的支援を必要とする家庭を把握しやすくなる。これまで支援が届いていなかった家庭への素早いサポートにつなげたい。
 親の妊娠から出産、生まれた子どもの社会的自立まで切れ目なく支援していく方針も大綱に盛り込まれた。行政の役割として当然の支援だが、明文化したのはこれまで十分でなかった証左でもある。
 2014年に施行された子どもの貧困対策推進法により政府は同年、初めての大綱を決定した。世代を超えて貧困が連鎖しないよう、必要な環境整備と教育の機会均等などを図るとしている。
 この5年で改善しただろうか。
 平均的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合を示す「子どもの貧困率」は以前よりわずかに改善したものの、まだ7人に1人が貧困状態にある。先進国の中では高い水準のままだ。
 貧困家庭の事情はそれぞれ異なるが、ひとり親の世帯は仕事と子育てに追われ、日々不安を抱えながらも声を出せずに孤立しているケースが少なくない。
 さまざまな指標で家庭の状況を的確に把握し、素早い支援につなげる。この大切な役割を担うのが住民に最も身近な市区町村だ。
 今年6月に改正された同推進法は、貧困対策の計画づくりの努力義務を都道府県に加えて市区町村にも広げた。しかし、策定済みの自治体はまだ少ない。支援を要する家庭がどこにも相談できずに困っているかもしれない。市区町村の職員は住民の思いに寄り添ってほしい。
 自治体の業務を円滑に進めるには福祉部門の縦割り行政の見直しが大切になる。
 兵庫や滋賀県の自治体の中には高齢者や障害者の担当課と専門機関などが連携し、貧困や虐待への対応、地域の居場所づくりにつながった例があるという。子どもの貧困対策でも垣根を越えて部署が連携すれば早期対応が可能かもしれない。
 東京都文京区は、ふるさと納税を活用してひとり親世帯に食品や日用品を定期的に配布している。届ける際の接触を通して支援先の家庭の社会的孤立を防ぐ目的もある。こうした先進的な事例を多くの自治体で共有したい。
 政府は来年度にも、全国の子どもの生活実態を調査する。これまでの貧困対策に何が足らなかったのか。当事者らの意見を詳しく聞く必要がある。

カテゴリー: 社説


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