2019.11.12 08:39

四国電力が再生可能エネルギー出力制御か 太陽光発電9年で26倍

 四国電力が、太陽光や風力発電の再生可能エネルギー事業者に一時的な発電停止を指示する「出力制御」を行う可能性が高まっている。2018年秋、離島を除き全国で初めて実施した九州電力同様、原因は「電力余り」だ。四国の太陽光発電は9年間で26倍に増え、昨年再稼働した伊方原発3号機(愛媛県伊方町)も供給を底上げ。減少傾向にある需要とのギャップに、緊張が続いている。

 「これほどのペースは想定していなかった」。四国の太陽光発電の普及スピードに、四国電力の担当者は頭を抱える。東京電力福島第1原発事故前の2010年3月末に約10万キロワットだったが、2019年8月末は259万キロワット。2012年7月に始まった「固定価格買い取り制度」が急速な拡大を促した。

■需要は減少
 一方、東日本大震災後の節電意識高揚や、省エネ機器の普及などを背景に電力需要は減少傾向にある。四国の最大電力(1時間当たりの最大需要)の最高は、2008年8月4日の576万5千キロワット。対して2019年夏は8月2日の500万9千キロワットで、過去25年間で最低だった。

 電力は常に使用量と供給量を一致させる必要があり、需給が崩れると機器の損傷を防ぐため発電設備が自動停止し、最悪、大規模停電に至る。出力制御は国の「優先給電ルール」に基づき、まず火力発電の稼働を最大限抑え、他の電力会社に電気を融通しても供給過剰となる場合に行う。小刻みな出力調整が難しい原子力の制限は最後だ。

■遅かれ早かれ
 10連休となった今年のゴールデンウイーク。四国電力の発電所は緊張に満ちていた。冬場に比べ太陽光の発電効率が上がる一方、多くのオフィスや工場が休業し、電力需要は大幅に低下するからだ。

 実際、5月5日正午から午後1時までの電力需要が219万キロワットだったのに対し、太陽光の供給力は、その90%に当たる197万キロワットに達した。四国電力は火力の抑制、本州への電力融通などで出力制御を回避した。

 ただ、太陽光の導入量は毎月約2万キロワットのペースで増え続けている。一方、電力の需給調整機能を併せ持つ揚水発電所は、四国内に本川発電所(高知県吾川郡いの町)だけ。現在は定期検査のため運転を停止しており、全面再開は12月下旬だ。

 10月31日の記者会見で、出力制御の可能性を問われた四国電力の長井啓介社長は「避けるべく、最大限の努力を続けている」と述べるにとどめた。ただ、発電現場の職員は「努力はしているが、実施は遅かれ早かれ、との思いはある」。

 高知県内のある太陽光事業者は「出力制御が九州であれほど常態化するとは思わなかった」と、四国電力の動向と経営への影響を懸念。2018年度実績では、全体の電力供給に占める太陽光の割合は、まだ9・2%にすぎない。「再エネの主力電源化を目指すというなら、原発の利用率を下げるなどして影響を抑えてほしい」と訴える。

 普及を推進してきた再生可能エネルギーの前にちらつく出力制御。エネルギー政策の矛盾があぶり出されている。

太陽光発電の普及により、“蓄電”の役割が増している本川発電所(吾川郡いの町脇ノ山)
太陽光発電の普及により、“蓄電”の役割が増している本川発電所(吾川郡いの町脇ノ山)
四国電力 余剰電力吸収に苦心 “蓄電”本川発電所(いの町)だけ
 四国でも再生可能エネルギーの出力制御が行われる可能性が高まる中、電力の需給調整に大きな役割を果たしているのが、本川発電所(高知県吾川郡いの町)だ。巨大蓄電池にも例えられる、四国で唯一の揚水発電所。ただ、老朽化が進む施設は余剰電力の増加で“酷使”されており、四国電力は新たな需給調整の仕組みも模索し始めた。

 本川発電所の出力は四国最大級の61万5千キロワット。落差が567メートルある上池と下池の二つのダムを持つ。電力需要が少ない時は、電気を消費し、下池から上池に水をくみ上げる。需要が多ければ逆に、上池から下池に水を落として発電する。

 「揚水起動します」

 10月下旬の午前11時、発電所内にアナウンスが響いた。「今日は揚水を予定していなかったのですが」。小谷英彰・本川水力センター所長が苦笑した。四国地方は前日までの雨がやんで晴れ間が広がり、太陽光発電の出力が上がっていた。

■昼夜逆転
 以前は夜間に水をくみ上げ、昼間に水を落として発電する運用が多かった。2009年度、昼間の揚水運転は35時間で、昼夜トータルに占める割合は4%だった。だが、2016年度は576時間、58%と逆転。2018年度は829時間、80%に達した。

 電力不足を補う「予備力」から、電力余りを吸収する「調整力」へ。小谷所長は太陽光の普及により本川発電所の役割が様変わりしたと指摘し、「需給に即応する揚水運転のため、起動、停止を繰り返さなければならなくなった」と話す。

 起動回数の増加は1982年の運転開始から37年が経過した設備の負担となり、維持点検作業も増えたという。今年は1号機が9月20日から、2号機が11月11日から定期検査中。2号機の検査が終わる12月4日までは全面停止が続く。その間、本川発電所の“蓄電機能”が働かないことも、出力制御が現実味を帯びる要因だ。

 小谷所長は「再生可能エネルギーの普及に対応するためには、もっと電力需給の調整力が必要。もう一カ所、揚水発電所があれば楽になるが…」と漏らす。

■実用化遠く 給湯器操作で調整実験
 四国電力は10月、香川県内の40世帯で新たな需給調整の実証試験を始めた。各家庭の電気給湯器を遠隔操作し、通常は夜間に行う湯沸かし運転を昼間にシフトした。昼間に過剰となる太陽光の供給力を吸収する試みだ。

 四国電力によると、四国内で使用中の電気給湯器は約52万台。このうち、技術的に遠隔操作できるのは推定約2万台という。シフト分の消費電力量は計約10万キロワットと、ゴールデンウイーク期間の昼間の電力需要を5%ほど高められるとみている。

 四国電力はこのほか、車載蓄電池の活用も模索している。7月には先進的な蓄電池の制御技術を持つ東京のベンチャー企業と資本業務提携。電気自動車の普及で増加が見込まれる使用済みの蓄電池を、太陽光や風力など再生可能エネルギー用に再利用する構想だ。

 四国電力の広報担当者は「提携企業の優れた技術や当社のノウハウを生かして、二酸化炭素を排出しない再エネをできるだけ確保したい」と強調する。ただ、給湯器の遠隔操作や蓄電池の再利用は、あくまで将来を見据えた取り組み。実用化のめどは立っておらず、目の前に迫る「出力制御」の回避策にはならないという。(高松支局・井上学)

カテゴリー: 政治・経済高知中央


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