2019.11.04 08:43

[ふれあい高新in三原村]濃厚!三原ナイト 村1軒のスナックで

村で1軒のスナック「Yes No」。今夜も混沌(こんとん)としてきた(写真はいずれも三原村下長谷=楠瀬健太撮影)
村で1軒のスナック「Yes No」。今夜も混沌(こんとん)としてきた(写真はいずれも三原村下長谷=楠瀬健太撮影)
「味が変わるけんっ」。どぶろくをシェークする和美ママ
「味が変わるけんっ」。どぶろくをシェークする和美ママ
山里にぽっと明かりをともし営業中の「Yes No」
山里にぽっと明かりをともし営業中の「Yes No」
 どっぷり日が暮れた三原村。星空のまたたきを道しるべに、今夜も村人が動きだす。どこに行こうと、何をしようと、行き着く先は山奥にある村に1軒のカラオケスナック。濃厚な三原ナイトが開宴した。

 同村下長谷。県道からくねくね道を50メートルほど上る。スナック「Yes(イエス) No(ノー)」は、野菜畑と山が連なる風景に溶け込んで立っている。

 車庫を改装した店。ドアを開けると、激しい叫びが出迎えた。

 「♪ろくなもんじゃねぇぇ」

 「全然、声出てないやか!」。笑って突っ込むのはママの和美さん(54)。客のマイクを奪うと、エネルギッシュで美しいお手本を示していく。

 27歳から村内で場所を変えて飲み屋さんを続けてきた。4人の子を育て、7人の孫がいる。「ほかの仕事、バイトでもしたことないけん。マイペースな飲み屋がええかと」

 20年ほど前に今の場所に落ち着いた。店名は「イエスかノーか。好き嫌いがはっきりしちょう性格」から。ちなみに、好きなタイプは「郷ひろみっ」。

 この夜は、常連8人が入れ代わり立ち代わり、三つのテーブル席を埋めた。大月町の社長(57)が持ち込んだ伊勢エビ鍋をみんなでつつき、カラオケをBGMにして、脈絡があるようなないような話がぐるぐる巡る。

 「だから、○○はいかんがよっ」

 「そう言うたち、おまん…。和美! ビールちょうだい」

 和美ママは茶髪を束ねて忙しく動き回る。水割りを作り、差し出された杯を鋭く返し、客のマイクを奪い、空になった鍋をよそい、愚痴を聞いていく。

 “ニイカンさん”と呼ばれる常連の男性(63)が、高知新聞の記者に肩を回してきた。赤い顔でつぶやく。「和美には何でも話せるがっ。おまんには、まだ話せん」

 村内で日常的に酒を提供している店はここと、役場にほど近い居酒屋「すぎ本」だけ。この2店を回るのが三原の定番ルートだ。

 「♪ウォンビー、ロンッ!」。狭い店。スーツの男性がいすにぶつかりながら軽妙なステップを披露し、歌いだした。発音がいい。神奈川出身という。

 43歳。NGO職員として世界を巡り、地方の1次産業をなんとかしたくて高知県庁へ。村に派遣されて5年目になる。5カ国語を自在に操る。山里の懐は深い。

 全員酔いが回ったころ、誰かが農家食堂に電話で注文していたどぶろくが届いた。「今からどぶろく?」。客がこわばる中、和美ママは4合瓶をぶんぶん振りだした。「シェークすると味が変わるけんねっ」

 もはや、どぶろくのもろみも、見守る男性陣もとろっとろ。三原産の最終兵器が、皆にとどめを刺すべく振る舞われていく―。

 深夜。はい出すように店を出る。星空の下で、和美ママが優しく見送ってくれた。「また来たやっ」

 決して「ノー」と言えぬ迫力と笑顔。三原の夜は、どぶろくのように濃い。(新妻亮太)

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カテゴリー: 社会ふれあい高新2019社会幡多

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