2019.11.01 13:41

【動画】半端ない粘り…山の恵み!自然薯を掘る[ふれあい高新in三原村]


高知県のほぼ西の端。四方を山に囲まれた幡多郡三原村では四季折々、野山の恵みが食卓を彩る生活が色濃く残っている。春にはワラビやゼンマイ、夏は川エビや天然ウナギ、秋はツガニ…。素朴ながら、とる人がいないとなかなか味わえないぜいたくな食材ばかり。中でも、山が色づきはじめるこの季節は、なんと言っても自然薯(じねんじょ)。山の中、やぶをかき分けて秋の味覚を探し出す村民の後を追いかけた。
だしと合わせた自然薯汁を三原米にかける。まさに絶品。
だしと合わせた自然薯汁を三原米にかける。まさに絶品。


三原村の南西部に位置する下切地区。案内してくれたのは、村で農林業に汗を流す集落営農組織「フォレストファーマーズ下切」の阿部俊哉さん(55)と、宮川実さん(61)の2人。「さあ、行ってみるか」。乗り込んだ軽トラックで、山道を数分上った斜面の脇で車が止まった。あらかじめ、2人が見つけていたポイントだ。
獣害の防止柵に巻き付いたつるにはムカゴも
獣害の防止柵に巻き付いたつるにはムカゴも


木々が立ちこめ、やぶが広がる山でどうやって自然薯を見つけるのか。答えは、地中の芋から伸びるつる。周囲の木に巻き付く細長いハート型の葉っぱをつけたつるを探すのだという。緑色では周囲に同化して判別がつかないが、「これからの時期は葉っぱが黄色くなるから見つけやすいのよ」と阿部さん。仕事で山に入るとき、車で山際を走るときにきょろきょろ眺めては当たりをつけておくそう。宮川さんも「ついついよそ見して、ガードレールにぶつかりそうになる」と、にかっ。車には常に望遠鏡も乗せていて、気になる場所でのぞき込むというつわものぶりだ。

そうやって見つけた今回の場所は、急な斜面のやぶ。「ここを降りて行くんですか?」。ためらう記者をよそ目に阿部さんはずんずん降りていった。自然薯は育つ場所を選ばないようで、埋まっているのは平らな地面だったり、斜面だったり。大きいものは1メートルを優に超えるため、当然斜面の方が掘りやすい。「ほら、ここにあるろう」。阿部さんが掘りやすい斜面を指さした。
 

つるは近くに立つ3メートルほどの木に巻き付き、葉っぱが黄色く色づき始めていた。根元で直径約5ミリのつるを手に「これぐらい太かったらいい芋かもしれん」。期待の笑顔を浮かべた阿部さんが、マイナスドライバーを曲げた自作の道具で土を掘りはじめる。柔らかい自然薯を傷つけないよう、優しく丁寧に。土は粘度のある赤土。「えい芋かもしれんなぁ」と再び期待が口をつく。いわく、赤土には虫が入りにくく、痛みが少ない上に、芋の身が白い。赤土以外にも生えるが、埋まっている石を避けて曲がり、虫に食われることが多いそうだ。
期待とは裏腹な成果にがっくり。でも、掘ってみないと分からないのが自然薯掘り
期待とは裏腹な成果にがっくり。でも、掘ってみないと分からないのが自然薯掘り


掘り始めて10分ほど。自然薯が姿を表した。ところが、よいと思われた赤土の下には石があり、芋が大きく曲がっているよう。「これはいかん。いいと思ったのに」。ぽろっと取り出されたのは40センチほどの芋。残念ながら、大きな自然薯ではなかった。「こればっかりは掘ってみんとわからん」。2人が口をそろえるように、太いつるや赤土は良い自然薯を見つける目安だが、全てが当てはまるわけではない。阿部さんの自己記録の2メートルに迫る自然薯も、つるは今回のつるよりずいぶん細かったのだとか。「まあ、こんなこともある」と肩を落としたのもつかの間。すぐに2人は近くに生えていそうな場所を見定め、3本ほどのつるを発見。「また次に掘ろうかね」。何ともたくましい山の男たちだ。

自然薯掘りに同行したからには、やはり味わってみたい。別の日、ご相伴にあずかった。掘った自然薯はまず水で洗って土を落とし、毛のように生えた根っこを切る。黒く変色した虫食いの跡も取り除くと、おろし金ですり下ろしていく。すっただけでも相当な粘りだが、それをすり鉢へ。サンショウの木のすりこぎで20~30分する。これで、すり鉢を逆さにしても落ちないような強い粘りと弾力が生まれる。
おろし金ですり下ろす
おろし金ですり下ろす


「食べてみる?」。宮川さんがすり立ての自然薯を取り分けてくれる。おすすめの直七の果汁を少しかけて口へ。ほんのりと土の香り。かみ応えと豊壌な自然のうまみが口の中に広がる。「どう?おいしいろう」と笑顔の2人は、続いてすった自然薯に魚などで取っただし汁を投入。粘りを解きほぐすように少しずつだし汁を加えながら、優しく混ぜ合わせていく。


とろとろのスープ状になった自然薯汁。食欲をそそる香りに誘われ、ずずっと流し込むと、濃厚なこくとうまみが一気に口の中で広がった。ほどよい粘りで味わいが口の中にとどまる。あっという間におわん一杯の汁を飲み干してしまった。「これをご飯にかけたら最高で!」。今度は羽釜で炊いた三原米に、汁をたっぷりかける。お茶漬けのようにかき込んでしまうおいしさ。滋味あふれる何とも幸せな味に、おかわりを続けてしまった。
サンショウの木ですった自然薯をだしで溶く
サンショウの木ですった自然薯をだしで溶く


小学生ぐらいから父親らに習って、自然薯を掘っていたという2人。村には、自然の恵みを日常で味わう生活が、今も力強く息づいている。
(飯野浩和)

前日に掘った自然薯(左)と比べてみる。つるは当日の自然薯が太いのだが・・・
前日に掘った自然薯(左)と比べてみる。つるは当日の自然薯が太いのだが・・・

関連記事

もっと見る

カテゴリー: Web限定主要幡多Web限定


ページトップへ