2019.10.25 08:00

【日米貿易協定】バランスの厳しい検証を

 日米貿易協定の承認案が、衆院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、審議入りした。
 広く国民の生活に関わり日本経済の行方にも大きく影響する。拙速な議論に陥らず、厳密に影響を見極めるべきだ。
 日米貿易協定は2017年1月、トランプ米大統領が環太平洋連携協定(TPP)から一方的に離脱したことが発端だ。米国は保護主義に急激にかじを切った。
 日本は参加11カ国のTPPに残る道を選択。自由貿易推進の立場を自認する。それに対しトランプ氏が取った戦術は、米国第一主義による日本との2国間交渉である。
 合意した貿易協定について、安倍首相は「守るべきものは守り、取るべきものは取った」、トランプ氏も「日米双方にとって大きな成功だ」と自賛する。お互いが「ウィンウィン」と言いたいのだろう。
 本当にそうなっているのか。今回は、日本が米農産物への関税を引き下げて譲歩し、代わりに自動車や関連部品の米国の関税を撤廃して実利を得ることが目的だった。
 このバランスからみると、現時点で明らかになっていることでも、大きな疑問点が出てくる。
 貿易協定では、牛肉や豚肉など農産物の関税の多くがTPP参加11カ国に合わせ、発効2年目までの水準まで引き下げられる。米側によると、日本は約7700億円分の関税を撤廃・削減する。
 一方の工業分野では、日本車や関連部品も含めてTPPでは認められていた関税撤廃は見送られた。交渉継続の文言はあるものの、撤廃の期限などは明らかでない。
 しかも政府の経済効果の試算は、自動車などの関税撤廃を前提としたものになっている。撤廃実現の見通しのないまま、試算に含めると効果は大きく膨らみ参考にならない。
 実態を表していない関税撤廃率は、関税率90%を目安とする世界貿易機関(WTO)のルールから逸脱しているとの指摘もある。
 この撤廃見送りには、トランプ流のしたたかな計算があるのかもしれない。トランプ氏は完全撤廃を阻止するために、日本車への追加関税や数量規制を持ち出した。さらには安全保障も絡めて日本に揺さぶりをかけた。
 高めにふっかけておいて、現状維持なら損はない。これでは脅しと変わらない。しかも大統領選を控え、今回の協定を大きな成果と誇示する、トランプ氏が関税撤廃を受け入れるとは考えにくい。
 政府は譲歩した分野で、国内農業を守るという使命を負った。牛肉や豚肉、ワインなどの米国産食品が流入すれば、どのような影響があるのか。そのような細かい部分も含めて厳しいチェックをするのが国会の役目だ。
 ウィンウィンの関係とは、互いが譲歩して妥協点を見いだすことだろう。日米が「対等」の立場にあるのか、徹底した議論を望みたい。

カテゴリー: 社説

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