2019.10.20 08:00

【天皇即位の恩赦】時代に即した在り方に

 政府は天皇陛下の即位に伴う22日の「即位礼正殿の儀」に合わせて、政令恩赦を実施することを閣議決定した。罰金刑を受け、納付から3年以上経過した人を対象に、制限された資格が回復する「復権」を一律に認める。
 罪を犯した人の更生への励みとし、社会復帰を後押しする恩赦の狙い自体は否定しない。一方で、古くは君主の恩恵として実施されてきた。象徴天皇制の時代にそぐわない面もあろう。
 国家の慶弔時などに一律に実施する必要があるのかどうか、検討するべきだ。
 恩赦は裁判で確定した刑罰の内容を変更させたり、消滅させたりする制度。日本は旧憲法下で天皇の大権事項とされていたが、現行憲法では内閣の助言と承認により天皇が認証することになった。
 国家的な出来事や皇室の慶弔に合わせて実施するのが通例で、国連加盟や沖縄復帰、昭和天皇大喪などで10回行われた。今回実施されれば1993年の天皇陛下と皇后さまの結婚以来、26年ぶりとなる。
 ただし司法の判断を行政が変えることから、「三権分立を揺るがす」との批判が根強い。平成に入って犯罪被害者基本法が成立するなど、被害者感情を重視する国民の意識も高まっている。
 昭和天皇大喪では復権のほか、有罪判決を無効とする「大赦」も行われ計1千万人以上が対象となった。今回は復権のみで対象は約55万人。従来より規模を小さくし、批判をかわしたい狙いがあるのだろう。しかし、それだけで国民の理解が得られるだろうか。
 政令恩赦は対象となる罪や刑の種類などを政令で決定する。だが、内閣による検討の過程は明らかになっていない。
 過去には公民権停止で選挙権、被選挙権を制限された公職選挙法の違反者が多く対象となり、「政治恩赦」と批判されたこともある。選挙違反は「民主主義を根底から揺るがす。社会全体が被害者だ」として、恩赦の対象とするのを疑問視する専門家もいる。
 政令恩赦とは別に、罪を犯した本人の申請に基づき中央更生保護審査会が可否を審査する「個別恩赦」もある。この場合、個々の反省や更生の具合、被害者感情などが考慮されるため、一律に実施される政令恩赦とは事情が大きく異なる。恩赦の在り方として、こちらの方が理にかなっているのではないか。
 恩赦を巡ってさまざまな論点があるにもかかわらず、政治の場で国民に開かれた議論が尽くされてきたとはとても言えない。共同通信が今月初めに行った世論調査で、今回の恩赦に反対が60・2%と、賛成の24・8%を大きく上回った。国民の理解は広がっていない。
 恩赦は必要か。これからも制度を維持していくとするなら、時代に即してどう変えていくべきか。議論を深めなければならない。

カテゴリー: 社説


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