2019.10.10 08:46

ノーベル賞の吉野さん、高知大で昨年講演「未来変える発見を」

未来を変える発見や研究者の思いを学生の前で語った吉野彰さん(昨年12月8日、高知大朝倉キャンパス)
未来を変える発見や研究者の思いを学生の前で語った吉野彰さん(昨年12月8日、高知大朝倉キャンパス)
 ノーベル化学賞が決まった吉野彰さん(71)は2018年12月、高知大学朝倉キャンパスで開かれた講演で高知を訪れていた。高知大学で特任教員を務めている旭化成時代の元部下の紹介で初めての高知入り。学生ら約100人の前で「世界が大きく変わるときに言葉が生まれる。イノベーションは世界を変える」と鼓舞するように語った。
 
 吉野さんが講演したのは高知大学希望創発センターの1日限りの特別セミナー。「ノーベル賞に一番近い研究者の話を広く聴いて」と一般にも開放。約100人が詰めかけた。高知大の宮本智司(さとし)特任教員が旭化成に勤務していた時に、吉野さんが上司だった縁を生かした。
 
 講演ではリチウムイオン電池が生まれるまでの苦労を語った。研究費や時間、人生のロスとなるような研究課題を吉野さんは「致命的課題」と呼び、「研究開発で大事なのは、致命的課題を早く見極めることだ」とした。
 
 旭化成でリチウムイオン電池の研究を始めたのは33歳。当初は8ミリビデオの使用を想定していたが、その後、ノート型パソコン、電気自動車にまで用途が広がる。「そんな時代が来るとは想定外だった」と回顧し、「製品化した時点ではイノベーションとは呼ばない。それにより世界が変わるかどうかだ」と熱を込めた。
 
 未来を変えていくヒントとして「バズワード」を挙げ、「訳が分からないが、もっともらしく聞こえる専門用語のこと。ITもそうだった。未来を予想し、実現する言葉で、世の中が変わる10年前に大量に生まれる」。
 
 今後期待できるバズワードとして、リチウム電池を使った「AIEV」を掲げた。人工知能を駆使した無人運転の電気自動車のことで「無人の車をタクシーのように呼び寄せ、皆でシェアすればコストダウン。過疎地域の交通手段にも期待できる」と説明した。
 
 「マイカーの概念は未来では無くなる。環境に優しく、使用者のコストも軽減できる。これを両立させることがこれからのイノベーションだ」と語った。
 
 講演当日は高知龍馬空港到着後に「まだ時間があるから」と、近くの物部キャンパスのコートでテニスを楽しんだ。講演後も研究者や学生相手に1時間ほど語り合い、大学生協の食堂で開かれた懇親会で、高知の地酒を酌み交わした。
 
 池田啓実・希望創発センター長は「気さくで謙虚な方で、また高知に呼んでくださいねと言ってくださった。これからは忙しくなると思うが、ご縁をつなげたい」と喜んだ。(村瀬佐保)

カテゴリー: 環境・科学主要


ページトップへ