2019.10.09 08:00

【国会の代表質問】深める議論は憲法だけか

 国会で安倍首相の所信表明演説に対する代表質問が続いている。
 参院選と内閣改造を経て開会した臨時国会である。立法、行政の双方が新布陣となる中、衆参両院での代表質問は与野党と政府の姿勢が鮮明になる場といってよい。
 安倍政権下では与野党の「1強多弱」が指摘されて久しい。政権が国民の疑問や不安に答えるべく、いかに謙虚に国会論戦に向き合うかが問われていよう。
 だが、代表質問を見る限り、悲観的にならざるを得ない。
 立憲民主党の枝野代表らは千葉県などで大規模停電などが続き、住民生活が混乱した台風15号の政府対応をただした。住民から初動の遅れを指摘する声が出ているからだ。
 「素直におわびすべきだ」との投げ掛けに、安倍首相は「迅速、適切に行われてきた」と説明。内閣改造を優先したために後手に回ったとの批判には「指摘は当たらない」と反論した。
 関西電力役員らによる金品受領問題でも、かみ合わなかった。野党は政府による全容解明を迫ったが、首相は関電による解明や再発防止策が先決との立場を示した。
 もちろん企業や業界自身の自浄能力は欠かせない。ただ、原発政策の根幹を揺るがす事態だ。関電は昨年まとめた調査報告書を経済産業省にも報告していなかった。監督責任が問われている。
 消費税増税による景気の腰折れも大きな懸念材料だ。首相は「国内消費をしっかり下支えし、経済の好循環を確保する」と強気だが、米中貿易摩擦の影響もあり、景気の減速感は拭えない。
 国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」への補助金不交付や、日本郵政グループのNHKへの抗議問題も論議になった。
 首相は表現の自由の侵害や萎縮を否定。問題を指摘する野党に「いたずらにあおるような言動は隆々たる言論機関や才能あふれる芸術家に対して大変失礼」と返した。
 対照的だったのは憲法についてだ。改憲を目指す首相は野党に国会論議と改憲案を求めた。参院では、論議を行うべきだというのが国民の声だと指摘し、「良識の府である参院で与野党を超えた論議が深められることを期待する」と強調した。
 改憲論議の意義は否定しないが、これまで数の力で法案をごり押しし、「良識の府」を汚してきたのは安倍政権ではないのか。国会で論議を深めるべき課題は憲法だけではないことを強調しておきたい。
 参院では自民党の世耕参院幹事長が「首相答弁の居丈高な態度が気にくわない」との批判があることを紹介し、改善を促す場面もあった。首相は「野党からも謙虚で丁寧な首相と言ってもらえるよう、努力を重ねる」と応じている。
 先月まで閣僚だった世耕氏による「忠告」は一種の演出にも映るが、今後の国会運営において即実行してもらいたい。 

カテゴリー: 社説


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