2019.10.08 08:35

高知県内「インフラツーリズム」人気じわり 観光地に集客格差

見学者は2年で1.3倍
 ダムなどの大型公共施設を観光資源として生かす「インフラツーリズム」の人気が高知県内でもじわりと高まっている。国や県が受け入れた見学者は、2018年度9施設で約3700人と、2016年度(8施設)から3割増。2019年度は施設も12に増えた。宿毛市では10月、ダム壁面を利用した全国初のクライミング設備も完成予定で、誘客施設化がさらに進む。

 インフラツーリズムは、地域活性化や公共工事への理解を深めようと国土交通省が推進。2016年度にインターネットの専門サイトを立ち上げ、普段は見られない内部見学などを受け入れる施設を公開した。

県内の子どもたちを招いて開かれた横瀬川ダムの見学会(7月、宿毛市山奈町山田)
 2016年度の高知県内受け入れ施設は、宿毛市の中筋川ダムと、横瀬川ダムや高知港(高知市)など8施設。国や県の集計によると、計2783人が見学した。これに五台山トンネル(高知市)が加わった2018年度は計3695人。

 いずれも行政側が開いた見学会への参加者などが中心で、施設によってはその2~3倍の来訪者を把握している。本年度は高知県管理の大栃橋(香美市)や和田トンネル(北川村)などが新たに対象施設となり、“観光地化”はさらに進んでいる。

 ダムなどを巡る民間ツアーも全国的に増えており、国交省によると2016年度の32件が2018年度は107件。国交省は2017年度に367施設で46万7千人だった見学者を、2020年度までに100万人に増やす目標を立てている。

 国主導の取り組みが地元自治体を巻き込んだ格好だが、高知県地域観光課は「既存の施設を活用するので、新たな観光関連の整備費用が抑えられる」と、さらなる盛り上がりを期待する。

 クライミング施設は、宿毛市山奈町山田の横瀬川ダムに、宿毛市が国交省の協力を得て整備する。行政のみならず商工関係者らも加わった協議会のアイデア。観光にスポーツにと多面的な活用で、にぎわい創出を図る。

 生活の安全・便利をひっそりと支える―。そんな印象を変えつつある、巨大構造物の今を探った。

インフラ観光地に集客格差 継続性に課題 宿毛2ダムは官民連携
 高知県内で増えてきた「インフラツーリズム」の受け入れ施設。それぞれ、立地や観光拠点としての継続性など課題を抱え、集客数にも格差が生じている。伸び悩む施設の一方、宿毛市では官民が連携してダムへの誘客を進め、観光拠点として飛躍の可能性を広げている。 

 「建設中のダムを見られる機会は多くない」。8月下旬、宿毛市山奈町山田の横瀬川ダム(来年3月完成予定)を、森部翔也さん(30)=高知市土居町=が感激した様子で眺めていた。

 森部さんはこれまでに全国約250カ所のダムを訪れた愛好家。「山奥に人が造った最大規模の建造物がそびえている。ゾクゾクして、圧倒される」。この日は、中筋川ダム(宿毛市平田町黒川)も合わせて巡る見学会に、SNS(会員制交流サイト)を通じて知り合った仲間とヘルメット持参で参加した。 

■工事終われば…
 こうした“マニア”層も県内の見学者増に寄与しているとみられるが、全施設が好調なわけではない。

 高知海岸(土佐市―香南市)の堤防改良工事現場は、2016年に500人いた見学者が、2018年は10分の1の50人に激減。高知県担当者は「当初は土木系の大学生らが多く訪れたが、工事が進むにつれ、問い合わせが減った」と説明する。

 トンネルや橋などを管轄する関係者も「工事中だからこそ公開できる」と口をそろえる。完成後もイベントや見学会を開きやすいダムに比べ、交通インフラなどは観光拠点として継続しづらいとの指摘だ。

 そのダムにも格差はあり、和食ダム(安芸郡芸西村)では「豪雨の影響もあって…」2018年度の見学者は県内最少の36人。「ダム自体に目的がない限り寄りづらい」(大渡ダム=吾川郡仁淀川町)など、山奥の立地を嘆く声も聞かれた。

■全国表彰も
 一方、近くにキャンプ場を整備するなど古くから観光拠点化を図ってきた早明浦ダム(土佐郡土佐町)とともに、宿毛市のダムは県内インフラツーリズムのけん引役に躍り出た感がある。

 横瀬川ダムでは2018年、宿毛市観光協会が主導して夜の工事現場見学ツアーを開催。全国的にも珍しい事例として、全国のダム愛好家が選ぶ「ダム・アワード」のイベント賞に輝いた。

 2018年度の横瀬川ダム見学者は、前年の約3倍の1229人。県内のトップ、早明浦ダムの1252人に迫った。宿毛市の中筋川ダムも3位の452人。「見学者」にダムカード配布者を加えた来訪者は、中筋川ダムと横瀬川ダムの両ダムで計約4500人を数えた。

 横瀬川ダムでは近く完成予定のクライミング施設も大きな呼び水になるのは確実。地上63メートルのダム壁面に2コースを設け、イベントなどで体験者を募る。

 宿毛市商工観光課の上村秀生課長も、ダム単体では観光拠点として限界があるとし、クライマーの来訪を期待。自転車を活用したまちづくりを念頭に、「今後はダムをサイクリングコースに組み込むなどして、相乗効果を生みたい」と話す。

 「インフラ」のファンにとどまらず、来訪者の裾野を広げるには、施設管理者に加えて市町村や地元住民らがどれだけ前向きに取り組むかも鍵となりそうだ。(宿毛支局・新妻亮太)

27日にクライミング 横瀬川ダム
 宿毛市の横瀬川ダムでのクライミングとサイクリングが楽しめるイベントが27日、現地で行われる。

 クライミングは8メートルの2コースで、この日が“上り初め”となる。午前10時~午後4時。サイクリングは先着20人で要予約(18日締め切り)。午前11時に出発し、ダムの周辺約10キロを走る。正午からダム内部の見学会もある。

 いずれも無料。来場は専用のシャトルバスのみ。午前9時、同10時半、正午、午後1時半に宿毛市平田町東平2丁目の「Cafeマリロア」前発。クライミングの問い合わせは宿毛市商工観光課(0880・63・1119)、サイクリングとダム見学は国交省中筋川総合開発工事事務所(0880・66・0142)へ。

カテゴリー: 社会幡多高知中央香長安芸高吾北


ページトップへ