2019.10.06 08:00

【病院再編】地域主導で議論してこそ

 地域医療の核となっている病院の再編・統合を、国が強権的に進めることは許されない。
 厚生労働省が9月、全国の公立・公的病院のうち、診療実績が乏しく再編・統合の議論が必要とした424の病院名を初めて明らかにした。県内では高知西(高知市)▽JA高知(南国市)▽土佐市民(土佐市)▽国民健康保険仁淀(いの町)▽高北国民健康保険(佐川町)―の5病院が該当する。
 異例の公表に対し各地で不安の声が上がっている。住民の命と健康に関わる重大な問題である。地域の実情を踏まえた、地域主導の議論が欠かせない。
 団塊の世代の全員が75歳以上となる2025年には医療、介護費が急増する。このため厚労省は現在約124万床ある病院のベッド数を119万床まで削減。需要が高まるリハビリ向け病床や在宅医療への転換を図り、医療費を抑制したい考えだ。
 それに伴い都道府県もベッド数削減などを検討しているが、住民や首長の多くは慎重で難航している。病院名公表には議論を加速させたい狙いがあろう。しかし、難航しているのにはそれなりの理由がある。
 厚労省は診療実績の他に、競合する病院が「車で20分以内」の場所にあるかどうかも踏まえたとする。とはいえ公共交通機関の少ない地域で統合された場合、高齢者らが新たな病院に通うのが難しいケースは容易に想像できる。
 「過疎地では再編・統合の相手を見つけるのも難しい」「医師不足の病院では患者の受け入れができず、実績が上がらない。病院の需要がないわけではない」
 地方からはこんな声も上がっている。机上の計算や線引きで、機械的に再編することなどできない。
 一方で都市部以外では多くの公立病院が赤字経営に陥り、自治体財政を圧迫しているのも事実だ。人口減少や医師不足が深刻化する中、病院再編を進め、地域で限られた医療スタッフや機器を有効に活用することも必要となってこよう。
 厚労省は再編・統合を行わない場合は本年度中に、行う場合は来年9月までに議論の結論を出すよう求めている。むろん公立・公的病院の運営を巡り、決定権を持つのはあくまでも地方の側である。
 国に求められるのは、地方分権にそぐわない強権的な指導ではない。どうすれば地域住民が安心できる、持続可能な医療を提供できるか。地方とともに知恵を絞ることだろう。
 病院再編は統廃合だけでなく、一部の診療科を他の病院に移すなど規模の縮小や機能の転換、集約なども含まれる。厚労省は地域に出向き、病院名公表の経緯や再編の内容などについて説明し、理解を求めなければならない。
 人口減も高齢化もこの先さらに進む。それに合わせて「医療の形」を見直すことは避けられない。地域ごとに住民一人一人が、しっかり向き合って考えたい。

カテゴリー: 社説

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