2019.09.22 08:00

【マスコミ倫理】役割と責任の重さ改めて

 「伝えるのは、何のため、誰のため」をメインテーマに、高知市でマスコミ倫理懇談会全国協議会の第63回全国大会が開かれた。
 同協議会は新聞や放送、出版など200以上のメディアで構成。年1回の大会で信頼確保に向けた課題や対策を話し合っている。本県では1987年以来2回目で、その際のテーマは「表現の自由と責任」。当時は報道による人権侵害がクローズアップされていた。
 「マスコミと国民の関係にさまざまの摩擦が生じ始めている事実は重視されねばならない」「『言論の自由』は、使われ方次第で両刃の剣となる。そうしないための努力が強く求められだしている」
 大会を取り上げた32年前の本欄はそう警鐘を鳴らしている。報道と人権を巡る現在の状況にも当てはまる。メディアは重い課題を背負い続けていると言えよう。
 今回の高知大会でも、7月に起きた京都アニメーション放火殺人事件の犠牲者の実名報道がテーマの一つとなった。地元紙には「遺族の意向を無視している」といった多数の苦情や抗議が寄せられた。
 プライバシー保護を望む遺族の思いや、多数の報道機関が一挙に押し寄せる「集団的過熱取材(メディアスクラム)」などの影響があろう。
 半面、氏名は人が個人として尊重される基礎である。実名は匿名に比べて読者、視聴者に強く働き掛ける力を持ち事実の重みを伝える。メディアにとってはすべての始まり、原点である―。私たちはそんな思いから実名発表、実名報道の必要性を訴えてきた。
 匿名報道を求める声が高まる中、被害者や遺族の意向を尊重することはもちろんだ。同時に実名報道の重要性も今まで以上に積極的に、丁寧に説明していかなければならないと考える。長年指摘されてきたメディアスクラムの改善に向けても、具体的な行動が問われている。
 変わらぬ課題がある一方で、メディアを取り巻く環境は様変わりしてきた。インターネットやSNS(会員制交流サイト)などの台頭によって、人々が情報を入手する手段は多様化した。既存のメディアに接することが少ない人々に、どう情報を届け信頼を得ていくか。難しい課題も新たに生じている。
 近年、一部の権力者が自らにとって不都合な報道を「フェイクニュース」と決めつける風潮が強まっている。公文書の改ざんや隠蔽(いんぺい)、街頭演説の場からの聴衆の排除…。表現や言論の自由、知る権利がないがしろにされる事態も起きている。
 権力を監視するメディアの使命もまた重要さを増していよう。
 〈メディアが果たすべき役割と社会的責任は何か、一人一人が真剣に考え、より高い倫理に基づいた報道を実践していく〉。高知大会での申し合わせを日々想起しながら取材、報道に当たりたい。
 言論の自由は、国民の信頼と支持を得て初めて大きな力となる。

カテゴリー: 社説


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