2019.09.20 19:30

「ここは何でもあるき」 ホームセンターゆうきち ニッチな品ぞろえの訳は・・・ 南国市



古い民具のような農具や日用雑貨がずらっと掲載されたチラシを見て気になっていた店がある。高知県南国市大そねの国道55号から、県道南国インター線を南へ進んだ先に店を構える「ホームセンター ゆうきち」。一見、一般的なホームセンターにも見えるが、その店内はどうなっているのか…。自動ドアをくぐってみた。

いきなり店頭で出くわしたのは「すげみの」。昔話の絵本でおじいさんが羽織っている、あれだ。何だかタイムスリップのような錯覚を覚えて、期待が膨らんでしまう。

「看板みたいなものですよ。ゴアテックスより高いですから、あははっ」と教えてくれたのは、ゆうきちを営む溝渕商店の溝渕泰介社長(44)。値段は2万366円、「まあ、看板なので『売って』と言われても困りますが」とにこやかだ。近くには、同じスゲで作られた「背みの」(3780円)も並んでいるが、こちらは「涼しいからよく売れる」のだとか。値段と大きさ以外、すげみのとの違いはよく分からないが、風通しがよく断熱性が高いので、夏場の稲刈りや草刈りなど農作業には欠かせないと、年間20個ほど売れるそうだ。

続いて目にとまったのは、金属製のかまど。まきを燃やして、もち米などを蒸す器具が、入り口近くにいくつも置いてある。なかなか見掛けないと思うが、泰介社長は「これはどこの店でもあるでしょ」と、こともなげ。

さらに店内を歩くと、今度はブリキ製の風呂釜が目に入った。湯船と管でつなぎ、釜の中でまきを燃やして、熱交換で湯を沸かす仕組み。売れるのは年に5、6台とか。近くには、かまどのふたに使う鋳物の焚き口も置いてある。こちらは手作りのピザ釜に使うと買っていった人もいて、年に3~6個売れるという。

ほかにも、巨大なフォークのような土佐打刃物製の芋掘り器、ついた餅を並べる「もろぶた」、時代劇に登場するような三度笠(さんどがさ)、竹かごとそれを背負って使う背負いかご、種などを選別するふるい、ウナギを取る筒、蜂蜜を採取するためのミツバチの巣箱、石臼にきね…。当然、商品なので新品だが、現在ではなかなかお目にかかれない道具が次々出てくる。

そうかと思えば、壁一面に大きな輪ゴムのようなものが掛かっている。聞けば、耕運機などでエンジンやモーターなどの動力を伝える「Vベルト」という部品。その数は10や20ではない。「いろんな型番を置いちゅうき、農機具の店も買いに来る」と泰介社長はさらり。

商品棚の一角では、木製のユズ絞り器も存在感を放っている。需要があるのか、気になるが、以前、農業関連の雑誌で紹介され、ネット販売で県外から注文が相次いで、年間100台も売れた。ところが、製造する職人が体調を崩したため、在庫が「心配になって」1年間ネット販売を停止。その影響で、職人が回復し販売を再開した後も客足は止まってしまい、今では年に10台ほどとぼつぼつの売れ行きに。「あれはしもうた。今思うても、もったいないことをした」と悔やんでいる。

通常のホームセンターとは一線を画すゆうきち。その商売の始まりは1887年と伝わっている。溝渕商店の原点は酒や酢などの商売をした泰介社長の高祖母で、屋号のゆうきちは、その跡を継いだ曽祖父の名前。ホームセンターの形態になったのは、先代社長時の1978年で、当時は収納用品や家庭雑貨、園芸用品などを並べていたという。

商品のラインナップが現在のように変わってきたのは、大手の同業店が進出して、それまで主力だったプラスチック製品の売れ行きが落ち込んだ20年ほど前。危機感を覚えた先代社長が「資本力が違うのはいかんともしがたい。なら、薄利多売の売れ筋は大手に任せて、需要は小さくても利益率が高く、お客さんが要望するものを」と方針転換した。父の跡を継いだ泰介社長は「客の要るものを聞きよったら、ニッチな物ばかり並ぶようになった」と笑う。

実際、「よそにはないものが、この店にはあるき」とは、30年来の常連という地元農家の男性(65)。仕事には欠かせない道具が手に入るようで、「古い物はほかのホームセンターにはないしね。土佐山田の友達も『たいていの物は見つかる』言うてよう来るで」と、稲刈り機用にとVベルトを買って帰った。

客の多くは農家や職人といい、地元だけでなく安芸市や東洋町、高知市土佐山や嶺北から通う人もいるという。泰介社長いわく「中山間地域にあった金物や荒物の店で、閉めてしまう店がずいぶん増えた」のが理由のようで、「いくつも店を回って『やっと置いてあった』とうちにたどり着くお客さんもいる」という。

客層は農家だけにとどまらない。穀物を選別する唐箕(とうみ)は、ソバや大豆、コスモスの種用に売れ、「お得意さんは高知大農学部の先生」とのこと。ほかにも地域協働で農作業などを手伝う学生用にくわや鎌、長靴に手袋、農業研究関連で流通が少ない野菜の種もよく売れる。

独自路線で商品展開するゆうきちだが、売るだけではない。「農家も大変やき、ちょっとでも節約して道具を使わんといかんろう」と、社長自ら草刈り機やポンプ、耕運機に電動工具まで修理を手がける。取材中も果樹を栽培する男性(69)が持ち込んだ農薬の噴霧器を手早く応急処置。男性は安心して、畑へと向かっていた。

物があふれる現代だが、使い慣れた古い道具を求める人はまだまだ多い。探して行き着くのが、ゆうきちなのだろう。(飯野浩和)


ホームセンター ゆうきち
南国市大そね乙1237-1
電話 088-864-2236
営業時間 9時~18時半
定休日 水曜

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