2019.09.20 08:39

「神仏は集落そのもの」 大豊町で過疎進んでも集落再編なし

年に1度、山の上の小さな社殿で祝詞が響く。神事が集落の絆を結んでいる(写真はいずれも大豊町奥大田)
年に1度、山の上の小さな社殿で祝詞が響く。神事が集落の絆を結んでいる(写真はいずれも大豊町奥大田)
お祭り脈々 鳥居新調も
 長靴を履いた神職(64)が、急傾斜の参道をはうように登っていく。8月末、8世帯10人が暮らす高知県長岡郡大豊町の奥大田集落で、神祭がひっそりと行われた。大豊町では過疎高齢化が進んでいるにもかかわらず、集落再編の動きはない。その要因の一つが、集落ごとの神仏の存在だという。 
 
 奥大田集落は、藩政期に番所があった交通の要所。かつては250人が住んでいたとされ、1982年までは小学校の分校もあった。
 
 この日神祭があった出雲大社のほか、星神社やお堂もあり、それぞれ年に複数回、神事・仏事を行ってきた。10人となった今は年に計4回が精いっぱいだが、区長の吉川正史さん(69)は「これだけは元気な限りやらないかん」と力を込める。
 
新調した石の鳥居。ここから社殿までは険しい参道になっている
新調した石の鳥居。ここから社殿までは険しい参道になっている
 そればかりか、住民らは昨年末、社殿から約300メートル下山した道路沿いに鳥居を新調した。総代の豊永頼長さん(64)は「我々の代が終われば、社殿でお祭りができんなる」と心配しつつ、もしそうなっても「鳥居があればそこに神社があることが分かる。僕の一生一代の行事」と胸を張った。
 
 大豊町にある85集落のうち、奥大田を含む74集落は65歳以上の高齢者が半数以上を占める。大豊町の高齢化率は県内市町村で最も高い58・4%。だが、集落数は1970年代から変わっていない。
 
 人口減は、神事・仏事のほか、「道役」と呼ばれる草刈りなどの集落活動にも支障を来している。このため大豊町は10年ほど前に集落の再編を検討し、投げ掛けた。しかし、わずか4世帯だったある集落は「たとえ住民が1人になっても、うちはうち」。最寄り集落との“統合”案を断ったという。
 
 役場で集落活性化を担当する森一芳室長補佐は「集落が一つになっても『氏神』は一緒にできない、というのが一番の理由」と、背景にある住民感情を説明する。ご神木を売ったり、寄付を集めたりして修繕などに備える“お宮会計”が、多い集落では1千万~2千万円あるとされ、将来的な使い道や管理もネックになっているという。
 
 奥大田の神祭は、出身者らを含め12人が社殿を囲んだ。「○○さんはどうしゆう」。住民らは集落に縁ある人々の息災や絆を確認し合った。
 
 大役を務めた豊永さんに聞いた。なぜ、そうまでして神仏を大切にするのか―。
 
 豊永さんは「神仏は集落そのもの。神仏を拝むことは、地域や家族の健康、家内安全を願うこと」。訳もない、というふうに、急な参道をすたすた下り始めた。(森本敦士)

カテゴリー: 文化・芸能嶺北


ページトップへ