2019.09.10 08:00

【日産の不当報酬】ゴーン体制と同類なのか

 経営トップが「私利」をほしいままにする。そんな悪弊がまん延しているのか。
 日産自動車の西川(さいかわ)広人社長兼最高経営責任者(CEO)の辞任が決まった。株価に連動して役員報酬が決まる制度で、不当に報酬を上乗せして受け取ったことを認めた。
 日産はカルロス・ゴーン前会長が報酬の虚偽記載や特別背任に問われた事件で揺れている。新たな不祥事により、日産が目指す企業統治改革や業績の立て直しは一層厳しくなったと言わざるを得ない。
 問題となっているのは、「ストック・アプリシエーション権(SAR)」制度。株価が事前に決められた水準を超えると、保有する株式数と株価に応じて差額を受け取れる。西川氏は2013年5月にSARを行使する際、当初の行使日を後にずらした。その間に株価が上昇し、数千万円多く受け取っていた疑いが社内調査で判明した。
 これは社内の規定にも違反しているという。恣意(しい)的に報酬額を上げればそれだけ会社の負担は重くなる。経営トップの資質が問われる由々しき問題ではないか。
 ところが、経営陣に西川氏の辞任を求める表立った動きは見えなかった。西川氏にも不当に受け取った分を返還することで幕引きしようとした節がうかがえる。一転、辞任となったのは社内外からの批判の高まりを受けてのことだろう。危機感に乏しいと言われても仕方ない。
 西川氏は「ゴーン体制時代の仕組みの一つだ」と話し、制度の運用は部下に任せていたとする。ひとごとのような対応に驚く。
 西川氏はゴーン体制からの決別を誓って、新生日産を率いているはずだ。SARがゴーン時代の仕組みなら、旧体制の問題点を洗い出す過程で報酬上乗せも把握できていたのではないか。
 今回はゴーン氏の側近だった元取締役が、月刊誌のインタビューに答えて「暴露」した。西川氏自身に関わる「うみ」だからこそ、早い段階で公表し自ら説明責任を果たすべきであったろう。
 そもそも「ゴーン・チルドレン」の中核として重用された西川氏には、ゴーン氏の疑惑を長年見逃してきた責任が問われている。それを曖昧にしたままトップに居座ることへの批判は根強い。結局、西川氏も「同じ穴のむじな」ではないのか―そんな疑念が強まれば信頼回復はさらに遠のく。
 株価上昇に応じて報酬が増える制度を採用する企業は他にもある。だが日産では西川氏だけでなく、複数の取締役らの報酬も上乗せされていた可能性が指摘されている。実態はどうなのか。徹底的に解明し、けじめをつけなければならない。
 日産の業績は急速に落ち込み、1万人を超える人員削減が計画されている。経営陣の不祥事で会社の「屋台骨」が揺らぎ、そのしわ寄せが現場に及ぶ。これでは懸命に働いている社員が浮かばれない。

カテゴリー: 社説


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