2019.09.08 08:00

【JOC非公開】時代の流れに逆行する

 清廉性や公平性が問われるスポーツは、大会や組織の運営も国民に開かれたものでなければならない。五輪やパラリンピックに関連するとなればなおさらだ。
 その前提が崩れかねない事態が日本オリンピック委員会(JOC)や2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会で起きている。
 JOCは今月10日から理事会を非公開にする。検討段階の情報も理事で共有し、本音での意見交換を促す狙いがあるという。
 開幕まで1年を切った東京五輪・パラリンピックでは、大会のチケット購入方法を説明する点字資料や、必要な情報を音声で案内するCDを組織委が作成していないことが分かった。障害者団体が作成を要望しているが応じていない。
 いずれも時代の流れに逆行する対応だ。至急改善するよう求める。
 JOC理事会の非公開化は、JOCが1991年に日本体育協会(現日本スポーツ協会)から独立後、初めてのことだ。
 スポーツ界では数年来、不祥事が相次いでいる。JOCでは、五輪招致を巡る疑惑でフランス司法当局の捜査対象となった竹田恒和前会長が再任方向から一転、6月の任期満了で会長を退任した。
 信頼回復や組織の立て直しという重責を背負って新会長に選ばれたのが山下泰裕氏だ。柔道の五輪金メダリストで、実直な人柄にも定評がある。会長就任時には組織統治や法令順守の強化に「真剣に取り組む必要がある」と決意を述べていた。
 その山下新体制が早々に理事会の非公開化を決めたから衝撃だ。批判の声が出るのも当然だろう。
 山下氏は理事会で積極的に発言する理事が少なく、会議が形骸化していると判断したようだが、非公開にして議論や組織が活性化する保証はない。透明性は議事概要の公開などで確保するというが、都合の悪い話が伏せ込まれる恐れはないか。
 JOCに求められているのはむしろより積極的な情報公開だ。公開の場で真剣な議論ができる組織に生まれかわることが求められる。
 東京五輪・パラリンピック組織委の対応も理解に苦しむ。組織委は自らの指針で、点字資料の提供が「望ましい」とし、点字を利用しない人のために「音声および拡大形式の文書も用意する」としている。
 今回の問題について組織委は、ホームページの音声読み上げ機能や専用ダイヤルを設けていると釈明するが、パソコンやスマートフォンを使えない人は多い。より多くの手段を提供していく姿勢が組織委になければ、東京五輪・パラリンピックが目指す「共生社会の実現」も果たせまい。
 スポーツ基本法は、全ての国民に関心や適性に応じてスポーツに親しむ「機会が確保されなければならない」とする。スポーツ団体には「運営の透明性の確保」も求める。JOCや組織委がこれら大原則をないがしろにすることは許されない。

カテゴリー: 社説


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