2019.09.07 14:35

マイナンバーカードの普及遠く 高知県は交付率脱最下位に本腰

マイナンバーカードの受付窓口(高知市丸ノ内仮庁舎の中央窓口センター)
マイナンバーカードの受付窓口(高知市丸ノ内仮庁舎の中央窓口センター)
利点浸透、信頼性…課題多く苦慮
 12桁の個人番号が記載されたマイナンバーカード(個人番号カード)が導入されて3年半余り。写真入り身分証明書として幅広く使えるという政府のPRもむなしく普及は進まず、高知県の交付率は全国最低のままだ。普及を強化する政府の新方針を踏まえ、県も利用促進に乗り出すが…。

 7月1日時点で全人口に対する交付枚数率は13・5%(約1727万2千枚)。交付率は全国最高の東京都でも18・1%(約247万4千枚)にとどまる。高知県はさらに低く7・7%(約5万5千枚)。制度スタート以来、最下位が定位置となっている。

■コンビニない
 高知県内で普及が進まない理由は単純。マイナンバーカードを使うメリットの乏しさだ。

 免許証のない人が身分証明書に使う…くらいしか、すぐに利点は思いつかない。

 長岡郡大豊町は制度が始まった当初、職員が地域に出向いて申請を受け付けた効果もあり、交付率は県内最高の15・0%。しかし、今では数日に1件ほどの取得しかない。大豊町職員は「正直、お勧めしにくい」と漏らす。

 県はこれまで、住民票の写しなどをコンビニで交付するサービスを導入するよう市町村に働き掛けてきた。南国市や香南市などが準備を進めているものの、県内で導入した自治体はまだゼロだ。

 交付率が最も低い安芸郡馬路村の担当者は「そもそも村にはコンビニがない」。県西部の職員は「サービスを始めるには数百万円のシステム改修費用が要る」と腰を引く。

 高知市のマイナンバーカード交付率は8・3%。カードを使えばインターネットを通じて児童手当など子育て関連の申請・届け出ができるサービスを導入したものの、申請者はカードの読み取り機を自費で買う必要がある。高知市での申請実績は年間数件という。

■上乗せ
 利用進まぬ不評のカード。しかし政府は、ここにきて巻き返しの動きを見せだした。

 6月、経済財政運営の基本方針「骨太の方針」に「2022年度中にほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを想定し、普及を強力に推進する」と明記。

 国と地方の公務員や扶養家族に対し、2019年度末までにマイナンバーカードを取得するよう通知した。実質的な”義務化”である。

 10月からの消費税増税やキャッシュレス決済の拡大を見据え、9月3日の政府会合では、スマートフォンの決済とマイナンバーカードを連携させる「ポイント制度」の導入方針が打ち出された。

 現時点で示された具体案は、マイナンバーカード所有者がスマホに2万円を入金すると、1人1回まで5千円分のポイントを国費で上乗せする、というもの。ポイントは全国で使えるようにするという。

 2021年3月からはマイナンバーカードが健康保険証として利用できる。転職で公的医療保険の加入先が変わっても、保険証を切り替えずに済むメリットがあるとされ、政府は全国約22万の病院や薬局にカードの読み取り端末購入やシステム改修費用を助成する方針だ。

■遅れるな
 「交付率最下位は非常に残念。ここは一挙に挽回したい」

 7月、尾﨑正直知事は高知県市長会との意見交換会で普及への協力を求めた。「カードの利便性が進化していくときに、高知県だけ利益を享受できなくなる」との考えからだった。

 マイナンバーカード取得を前提としたデジタル社会を目指す政府の大号令を受け、「乗り遅れるな」と呼び掛けたわけだ。国と地方がタッグを組む利用促進策はどこまで奏功するか。

 取得の”義務化”には高知県内の公務員から「普及のための押しつけ」と反発の声も上がる。高知市職員は「限られた職員で事務をやっている。公務員だけでも申請が集中すれば窓口がパンクしかねない」と戦々恐々だ。

 ポイントの上乗せは、まるで民間カード会社の加入促進キャンペーンのような大盤振る舞いだ。市町村の担当者からは「ばらまき」「いったい税金がいくらかかるのか」といった疑問の声が早くも聞かれる。

 「メリットが浸透して一気に広がったスマホみたいな普及は見込めない」。そう話す高知県中部の市職員は、情報漏えいが後を絶たず、マイナンバー制度そのものの信頼性が高まっていない状況も指摘する。

 課題だらけのマイナンバーカード普及。最下位脱出の道のりはまだ遠い。

カテゴリー: 社会


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