2019.09.03 08:00

【民間英語試験】文科省は何をしていた

 鳴り物入りで導入が決まった大学入試改革の柱が、実施を前に混乱に陥っている。このままだと受験生がしっかりした準備ができないまま、本番に突入する恐れがある。
 2020年度開始の「大学入学共通テスト」で導入される、英語の民間検定試験のことだ。試験が始まる来年4月まで7カ月となる中、日程や会場などの全体像は不明確なままとなっている。
 大学入学共通テストは大学入試センター試験の後継で、英語民間検定試験の導入は「読む・聞く・書く・話す」の4技能を測る。共通テストの中でも最大の目玉だ。
 現時点でセンターが認定した6団体の民間試験を活用し、来年4~12月、「英検」や「GTEC」など7種類から選んで最大2回受験することが決まっている。
 ところが、いまになっても制度の骨格となる試験日程や会場、大学入試にどう活用するかなどの詳細はまとまっていない。先日発表された文部科学省の調査では、全国の国公私立大の3割以上が民間試験を利用するかどうか「未定」とした。混乱を象徴していよう。
 なぜこんなことが起きたのか。
 そもそも民間の検定試験を導入するに当たっては、数々の課題が指摘されてきた。複数の民間団体の試験を公平に採点できるのか。会場は都市部に多く、旅費や宿泊代などを払う地方の受験生との間で教育機会の格差を生むことなどだ。
 このため民間試験の活用を見送る大学が出始めた。また民間の運営団体の中でも「TOEIC」が、「責任を持って対応できない」との理由で共通テストへの参加を取り下げた。この際も、文科省は「影響は限定的」として静観している。
 大学入試センターに問い合わせても一向に情報がそろわない中、各高校や教育関係者からは、いら立ちや憤りの声が上がり始めた。とうに進路を定めて準備にかかるはずの受験生の指導もままならない。本県の教育界も同様だ。
 現場の声を受けた全国高等学校長協会は7月下旬、「先が見通せないほどの混乱に陥っている」として文科省に不安解消を求める異例の要望書を提出した。
 具体的には、希望する時期や場所で試験を受けられる見通しが立っていない▽地域・経済格差への対応が不十分▽試験の詳細が明確でない▽公平・公正に対する不信がある--などだ。当初からの根本的な不安が渦巻いている。
 これに対し、柴山文科相は先日、ようやく情報提供の遅れを認めた。課題を一つ一つ解決する時間は十分あったはずなのに、文科省はいったい何をしていたのか。
 同省は全国の大学に、遅くとも9月中に必要な情報を公表するよう通知したが、現場に混乱を招いた責任は重い。学校長協会の中には「体制が整うまでは実施を見送るべきだ」との声が多い。ドタバタの中での見切り発車は禍根を残しかねない。

カテゴリー: 社説


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