2019.09.02 08:00

【新カミオカンデ】素粒子観測さらに高みへ

 日本が世界をリードするニュートリノなどの素粒子観測がさらに強化されることになった。文部科学省が次世代の素粒子観測装置「ハイパーカミオカンデ」を岐阜県飛騨市に建設する方針を決めた。
 来年度予算の概算要求に建設費の一部を盛り込み、「カミオカンデ」「スーパーカミオカンデ」の後継機とする。宇宙誕生の解明にもつながる分野だ。研究がさらに一歩先へ進むことを期待したい。
 素粒子は物質を構成する最小要素で、これ以上小さく分けることはできないと考えられている。ニュートリノもその一つだ。
 宇宙には膨大な量のニュートリノが存在するとみられるが、あまりに小さく電気も帯びていないため、人体はもちろん地球でさえ通り抜けてしまい、観測が難しい。
 初代のカミオカンデでは、小柴昌俊・東大特別栄誉教授が超新星爆発で発生したニュートリノの初観測に成功。続くスーパーカミオカンデでは梶田隆章・東大宇宙線研究所長がニュートリノに質量がある証拠を突き止めた。両氏はいずれもノーベル物理学賞を受賞している。
 新装置はこれまで通り地下深くに巨大水槽を設置し、ニュートリノが水を通過する時に出る微弱な光を観測する。水槽はさらに大型化し、スーパーカミオカンデの約5倍の水量と、性能を倍増させたセンサーで現象を高感度に捉える。
 これにより、スーパーカミオカンデの100年のデータが10年で得られるという。研究の中心となる東大は、ニュートリノ観測をさらに強化するとともに、3個の素粒子でできている陽子が変化する「陽子崩壊」の発見にも挑む考えだ。
 陽子崩壊の観測は研究者の悲願といってもよい。1983年にカミオカンデが設置された本来の目的もそれだったが、いまだ実現できていない。成功すれば新たなノーベル賞受賞も夢ではないだろう。
 約138億年前に誕生した宇宙は、多くの物質と、これとペアになるかたちで「反ニュートリノ」などの反物質が生まれたものの、物質のみが残ったとされている。その理由は解明されていない。
 宇宙はどう誕生し、どのような法則で成り立ち、これからどんな方向に進むのか。ほとんど分かっていないといってよい。素粒子や日米欧で観測が進む重力波などはそれらを探る重要な研究だ。
 日本が研究をさらなる高みへ先導していく意義は大きい。ただし、簡単に成果が出る分野ではなく、息の長い取り組みが必要になる。直ちに産業に貢献するものでもない。
 新装置は建設費だけでなく、維持費も巨額になるだろう。観測を継続していく若手研究者らが安心して取り組める環境も欠かせない。
 日本の基礎研究分野は、特に大学などで研究費が縮小される傾向にある。博士号取得を目指す若者も減りつつある。政府の科学研究への姿勢が問われている。

カテゴリー: 社説


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