2019.09.01 08:00

【概算要求】財政再建の原点に返れ

 財政再建の旗など吹き飛んでしまったかのようだ。
 2020年度予算編成に向けた各省庁からの概算要求が締め切られ、一般会計の要求総額は105兆円規模に膨らんだ。今後の査定で削られてはいくものの、20年度予算案は19年度に続き100兆円の大台を超えることが確実となっている。
 10月には国民に痛みを強いる消費税増税を控えている。増税の大きな目的は財政健全化である。その原点にいま一度立ち返るべきだ。
 要求が膨らんだ要因は、年金・医療など社会保障費や防衛費が最高額を塗り替えたことに加えて、頻発している豪雨など災害対策費も全体を押し上げた。
 とりわけ社会保障費は約33兆円とこれだけで3分の1近くを占める。高齢化の進行や子育て支援の充実などでやむを得ない面もあろう。だからこそ他の分野の予算は優先順位をつけて無駄を洗い出し、歳出削減を徹底しなければならない。
 にもかかわらず、なぜ財政規律は緩んでしまったのか。
 税収の伸びがまず挙げられよう。リーマン・ショック後の09年度に38兆円台まで落ち込んだが、景気回復で18年度は60兆3千億円台に回復。19年度は消費増税を織り込み、約62兆5千億円を見込んでいる。
 増税に伴う景気対策は別枠で上積むため、概算要求には含んでいないことも大きい。査定で概算要求を削っても、別枠があれば予算は抑え込みにくいだろう。
 増税対策にかこつけた予算の大盤振る舞いも指摘されているが、「お目付け役」の財務省は確実な増税実施を優先し容認している。これでは歳出削減はおぼつかない。
 19年度、借金である国債の発行額は歳入全体の3割を超えている。借金依存には日銀の金融緩和政策も影響していよう。金利を低く抑え込んでいるため、政府の国債の利払い負担が軽くて済むからだ。
 とはいえ国と地方の長期債務残高は、19年度末で1122兆円にまで膨らむ。金融環境が変化し金利が上昇すれば、想定外に財政が悪化するリスクは拭えない。
 借金返済以外の歳出を税収などで賄えているかどうかを表す「基礎的財政収支」について、政府は20年度に黒字化する目標を25年度に繰り下げた。しかし、消費増税を踏まえても達成は困難視されている。
 黒字化は借金をこれ以上増やさないという意味であり、財政健全化への最初の一歩にすぎない。それさえ難しいことが、状況の深刻さを示していよう。
 60兆円台の税収に対し、それを大きく上回る100兆円規模の巨額予算が常態化するのは健全とは言えまい。
 当欄で指摘してきたように、高額な防衛装備品の調達などで増える防衛費は適正か。概算要求の一つ一つについて精査が求められる。
 将来世代の負担をこれ以上増やさないよう、財政再建の道へ軌道修正を急がなければならない。

カテゴリー: 社説


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