2019.08.29 08:00

【年金財政検証】不安解消する制度改革を

 公的年金制度の「定期健康診断」とも呼ばれる5年に1度の財政検証を厚生労働省が公表した。
 高齢化と人口減がやはり大きく影響している。厚生年金に40年間入る夫と専業主婦のモデル世帯の約30年後の年金の価値は、現在の65歳と比べて2割近く目減りするという。
 現役世代の平均手取り収入に対する年金受給額の割合は所得代替率で示される。2004年の年金改革で政府は将来にわたり「代替率50%」を維持するとしていた。
 検証では現在の61・7%から50・8%に下がってしまった。数字上は今回の検証でも50%ラインを維持したものの、モデルケースは実質成長率が0・4%と比較的高く推移し、労働参加も順調に進んだ場合だ。
 不況になったり、労働参加が進まなかったりしたケースでは30~40%台に代替率は落ちてしまう。
 金融庁の審議会が、95歳まで夫婦で生活するには年金だけでは老後資金が足らず2千万円必要との報告書をまとめ、大きな問題になった。
 年金と恩給だけが収入という65歳以上の世帯は多い。「50%維持」といっても、このままでは将来に大きな不安を抱える世帯が多いだろう。
 特に心配なのは、公的年金の土台部分に当たる基礎年金(国民年金)の目減りだ。今回のモデルケースでも約3割低下する。
 国民年金には自営業者や非正規労働者らが入り、この年金だけに加入している人も少なくない。現状でも保険料を40年間納めた場合、満額月約6万5千円だ。納付期間が短ければ受給額は当然減る。3割の目減りはそうした人の暮らしを破綻させる恐れがあり、何としても防がねばならない。
 今回の検証を受けて厚労省はいくつかの改革案を示した。その一つが厚生年金の適用対象の拡大だ。正社員や大企業のパート労働者らにしか現在は加入義務がないが、その緩和を模索する。
 中小企業のパート労働者など非正規労働者にも加入を広げれば保険料が増えて給付水準は改善するという。国民年金だけの時より、新たな加入者の年金も増える。
 ただし、厚生年金の保険料は労使折半で負担が増す中小企業などからは異論が出るかもしれない。だが、非正規労働者は働く人の4割を占める。早急に見通しを付けるべきだ。
 国民年金の支払期間を現在の40年から45年に延ばす案もある。給付水準は改善されるが、国の財源確保などに課題がありそうだ。
 不可解だったのは財政検証の公表時期だ。過去2回はもっと早い時期だった。7月の参院選で問題になることを恐れた官邸や与党に配慮したとの臆測が飛び交った。恣意(しい)的ではなかったとしても、そう疑われた検証の在り方を反省すべきだ。
 年金は負担と給付のバランスが問われ続ける。定期健診を受け、制度をどう改革するのか。国民の不安を解消できないと、信頼度はさらに下がってしまう。

カテゴリー: 社説


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