2019.08.28 08:00

【G7閉幕】存在感ないサミットでは

 米中貿易戦争や温暖化対策などへの「答え」を示さないまま、フランスで開かれていた先進7カ国首脳会議(G7サミット)が閉幕した。
 サミットで毎回発表する包括的な「首脳宣言」づくりを議長国フランスのマクロン大統領は早々に断念した。イランやウクライナ問題など5項目からなるわずか1ページの総括文書だけになった。
 「米国第一主義」を掲げるトランプ米大統領と他国との溝が深すぎたからだ。トランプ政権が2017年に誕生した後、さまざまな国際会議でこうした状況が続いている。
 G7として「共通の価値観」や課題解決の方向性をきちんとした文書で示せない。こんな首脳会議などほとんど意味がない。サミットの存在意義そのものが問われている。
 冷戦時代の1975年に発足したサミットは西側先進国の結束を国際社会に示してきた。石油危機に端を発した経済状況への政策協調の場となり、政治経済や環境対策などさまざまな問題を討議してきた。
 2007年以降は貿易政策に「保護主義と闘う」などの文言を書き込み、自由貿易を推進してきた。
 ところが、17年のサミットでトランプ氏は関税不均衡を問題視し、この文言に抵抗した。最終的に盛り込まれたものの、米側に配慮し「不公正な貿易慣行に立ち向かう」との表現も併記された。
 トランプ氏は温暖化対策の「パリ協定」やイラン核合意からも離脱し、米国を除く6カ国との溝は開く一方だ。今回、トランプ氏との対立を避け、妥協点を探ろうとした仏大統領の思惑は分からないでもない。
 しかし、国際社会の受け止め方は違ったはずだ。自由貿易や民主主義などの価値観を共有してきた先進国に「自国第一主義」が広がり、外交より内政を優先している―。そう捉える途上国などがさらに増えれば、貿易や安全保障、環境などあらゆる問題での国際協調は難しくなる。
 G7に新興国も加わった20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が大阪で開かれた。こちらには世界2位の経済大国の中国も入っている。
 首脳宣言には「自由、公正、無差別な貿易体制」の重要性が明記された。自由な競争をゆがめるルール違反を認めず、むろん米中両国も宣言を守る必要がある。
 そう考えると、ほとんど何も決められないG7は歴史的な役割を終えたのかもしれない。中国やインドなど新興国が入ったG20サミットの方が世界経済への影響力はある。
 来年のG7は米国で開かれる。気になるのは、ロシアを巡るトランプ氏の動きだ。ウクライナ南部クリミアの強制編入で主要国(G8)を追放されたプーチン大統領を招待する可能性があるという。
 クリミア編入だけでなく人権問題などもロシアは抱えている。プーチン氏の価値観とG7各国のそれは同じではない。議長国だからといって、トランプ氏の勝手な行動は許されない。

カテゴリー: 社説

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