2019.08.27 08:00

【日米貿易協定】大筋合意に不安拭えず

 安倍首相とトランプ米大統領が、日米貿易交渉の大枠について首脳会談で合意した。来月の協定への署名を目指す。
 米国が強く求めてきた農産物の関税撤廃・削減は、環太平洋連携協定(TPP)で日米が合意していた水準とし、日本が求めていた自動車関税の撤廃は見送る。
 4月の協議入りから半年足らずでの決着となる。異例のスピード解決といってよいだろう。大統領選に向け成果を急ぎたいトランプ政権と、米国の圧力が強まらないうちに決着を図りたい安倍政権の思惑が一致した格好だ。
 とはいえ自動車関税の撤廃見送りは日本の大きな譲歩と言わざるを得ない。農産物、工業製品共に多くの点で合意内容が明らかにされておらず、不安は大きい。
 他にも譲歩した項目はないのか、米国が後から要求を強める恐れはないのかなども気掛かりだ。日本政府には緊張感を持った交渉と説明責任が求められる。
 貿易赤字の改善を掲げるトランプ政権は、中国との貿易摩擦の解決が見通せなくなっている。大統領選が来年に迫る中、実績をつくるには日本との貿易交渉を急ぐ必要があったのだろう。
 加えて農業大国オーストラリアなどが参加するTPPが米国抜きで発効。日本は欧州連合(EU)とも経済連携協定(EPA)を結んだ。日本の市場では牛肉や乳製品、豚肉、小麦、ワインなどの関税の引き下げや撤廃が始まり、米国は不利な状況になっていた。
 2国間交渉に身構えていた日本には有利に働いた面はあるが、これで日本市場はさらに開放が進むことになる。例えば牛肉は38・5%の関税が段階的に引き下げられ、16年目には9%になる可能性がある。
 小規模な生産者が受ける影響は大きい。農家支援などの対策をしっかりと進める必要がある。
 TPPの交渉で7万トンの無関税枠を設けたコメについては、今回日本がその削減を目指してきたが、決着の有無は明らかになっていない。一方で日本は米国産トウモロコシの追加輸入を決めた。
 日本の攻めの分野とされた工業製品も、茂木経済再生担当相が「日本の関心に沿った関税撤廃、削減が実現する」と発言しているが、具体的な品目は不明だ。
 米国が日本車に課す2・5%の関税撤廃はTPP交渉で日本が獲得した大きな成果だった。それを犠牲にする代わりに、米国は安全保障上の脅威を理由にした追加関税はかけない方針という。
 トランプ氏の再選に向けたお膳立てにも映る交渉だ。しかし、米国第一主義を掲げている大統領であることは忘れてはならない。
 選挙戦の行方によっては方針が急にひっくり返ったり、無理難題を押し付けてきたりする恐れは十分あろう。日本政府の思惑通りに進む保証はない。

カテゴリー: 社説

ページトップへ