2019.08.22 08:00

【4選不出馬】次代の知事像どう描くか

 尾﨑知事が今秋の県知事選に出馬せず、3期目の今期限りで退く意向を表明した。2007年から続いた尾﨑県政は12年で幕が下りる。
 知事職にもそれぞれの時代が要請する姿があろう。
 前任の橋本知事は「脱官僚」を主張し、地方分権論議でも国と対峙(たいじ)する姿勢が際立った。いまだに賛否はあるにせよ、中央集権による閉塞(へいそく)感からの脱却が叫ばれる時代の政治スタイルとして、その後の地方政治家にも影響を与えたのは事実だ。
 尾﨑知事は県経済が冷え込み、都市と地方の格差が広がる時代に県勢浮揚を宿命付けられて就任した。
 元財務官僚として熟知する中央集権の現実を「国に政策を打ち込む」姿勢で利用。本県の「実利」を追求するスタイルで知事職に向き合ってきたといえる。
 県庁の仕事の仕方も転換した。政策、事業のやりっ放しを避けるため「PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクル」を徹底。産業振興計画や中山間対策、南海トラフ地震対策などにも幅広く組み込んでいる。
 人口減少で疲弊する本県にあって、尾﨑県政は常に「成果」を求められてきた。
 各種指標を見ると、全国的な景気回復基調もあって有効求人倍率は長く1倍を超え、県外からの移住者は11年度の120組から18年度は934組に増えている。県によると、08~15年度の県内総生産(県内で生まれた付加価値の総額)は実質でプラス4・3%になっている。
 昨年末の世論調査で、尾﨑県政の満足度は8割を超える高水準を維持した。現実主義で実利を求め、人口減や経済の疲弊にあらがう「尾﨑流」を県民はおおむね評価してきたといえよう。
 一方で、県人口は既に70万人を割り、今後も減少が続く厳しい現実に変わりはない。賃金格差や雇用の選択肢など県政だけで解決できる課題ではないとはいえ、若者を中心に県内への転入と県外転出の差は毎年2千人台のマイナスが続く。
 尾﨑県政の何を受け継ぎ、何を転換するのか。次代のためにも、これまでの方向性や具体策は真剣な検証と総括が必要になろう。
 尾﨑知事は17年末、多選の弊害として自ら「知事絶対視」の危うさを説いたことがある。
 課題解決の先頭に立つ、トップダウン型の知事に対する県職員の忖度(そんたく)はたびたび指摘された。知事訓示では「悪い話ほど私か副知事に早く上げて」が繰り返された。
 県議会の存在感もかすみがちだ。前県政末期の「不毛な対立」への反省や、丁寧な事前説明を重視する尾﨑流の影響もあるのか、各常任委員会の審査時間が激減したというデータもある。今後の県勢浮揚には熱のある議論が欠かせまい。
 尾﨑知事は2、3期目と無投票当選が続き、県民は県政への意思表示ができなかった。転換期がくる。次代に必要な知事像をどう描くのか、県民も考える機会にしたい。

カテゴリー: 社説


ページトップへ