2019.08.20 08:00

【香港デモ】対話で道を開くしかない

 中国本土への犯罪容疑者の引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案を発端とした香港政府に対する若者らの抗議活動は、6月上旬の「100万人デモ」(主催者発表)から2カ月以上がたった。
 香港国際空港のロビーに若者らが長時間座り込み空港業務が大混乱したり、6月を上回る170万人規模(同)のデモが起きたりと、収束の兆しは全く見えない。
 こうした状況に、中国政府は介入を示唆するような「威嚇行動」に出ている。香港に接する広東省深圳では今月、武装警察隊員ら数百人が制圧訓練を行った。
 国際社会がこれほど注目している中、1989年に民主化運動を武力弾圧した天安門事件のような強硬手段に出る可能性は高くないかもしれない。だが、仮にそうなれば死傷者が多数出る恐れがある。アジアだけでなく世界の経済も混乱する。
 最悪の事態を防ぐために香港政府と若者らは話し合いの場を早急に持ってほしい。対話で道を切り開くしかない。
 それと同時に、徹底した抑え込みを警察力で図っている香港当局にはもっと慎重な対応を求めたい。デモ隊の強制排除にゴム弾や催涙弾を使い、負傷者が出ている。
 若者らにも自制を求めたい。先鋭化した一部の若者は短時間で各地を移動しながら道路を封鎖したり、火炎瓶などで警察署を攻撃したりする「ゲリラ戦」を展開している。
 状況がこれ以上エスカレートすれば対話自体が難しくなる。
 6月の大規模デモの後、香港政府は条例改正の無期限延期を発表した。だが、若者らは「完全撤回」を求めて抗議を続けている。
 97年の中国返還に当たり、香港は「一国二制度」の高度な自治が50年間保障された。条例改正は、その自治権を有名無実化しかねない。改正の無期限延期で若者らが納得しないのも当然だろう。中国経済の発展で香港の不動産は高騰した。購入できない低所得の若者層の不安も運動を激化させる方向に働いている。
 条例改正について当局はどんな考えなのか。話し合いの場でしっかりと市民側に伝える必要がある。
 長期化するデモによって深刻な影響が出ている。
 空港封鎖でアジア有数のハブ(拠点)空港は機能停止し、多くのビジネスマンや旅行者が混乱した。事前申請していない場所でデモは突然始まるため、観光客や市民が衝突に巻き込まれる危険性がある。
 そうした影響だろう。香港政府によると8月初旬の観光客は前年同期比で約3割減少し、6月の小売売上高も同1割近く減っている。さらに悪化するとの予測がある。
 毛沢東主席が北京で中華人民共和国の成立を宣言して今年で70年。記念日の10月1日までに香港政府は事態収拾を図るとの見方がある。状況打開に武力が使われることが決してないよう、国際社会がしっかり監視したい。

カテゴリー: 社説


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