2019.08.11 08:00

【辺野古訴訟】対話による解決を探れ

 国と自治体が法廷闘争を繰り返す事態は異常である。まず安倍政権が強硬姿勢を改め、十分な対話を尽くすのが本来の姿だということをあらためて指摘しておきたい。
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、県が国を相手取って新たな訴訟を那覇地裁に起こした。県の埋め立て承認撤回を国土交通相が取り消す裁決をしたのは違法だとして、国に裁決の取り消しを求めている。
 県は7月にも、裁決への国交相の関与は違法だとして福岡高裁那覇支部に裁決取り消しを求め、提訴している。今後は二つの裁判が並行して進むことになる。
 政府は、選挙や県民投票で示された民意を無視して埋め立て工事を強行してきた。訴訟は県が現時点で取ることができる対抗措置だろう。当面は司法が工事の正当性をどう判断するかが注目される。
 埋め立て承認の撤回は、昨年8月に死去した翁長雄志前知事の遺志を引き継ぎ、県が決定した。2013年の承認時には分かっていなかった軟弱地盤の発覚や、環境保全措置の不十分さなどが根拠になった。
 工事を止められた防衛省沖縄防衛局は行政不服審査法に基づき審査請求などを申し立て。石井国交相は防衛省の主張通りに撤回の効力を一時停止した。昨年12月から海域への土砂投入が始まり、着々と移設計画の既成事実化が進んでいる。
 国の法的手続きには、当初から厳しい批判があった。全国の行政法研究者らは、国民の権利救済を目的とする行政不服審査法を使って防衛局が申し立てたことを「国民のための制度を乱用し、法治国家にもとる」と糾弾している。
 同じ内閣の国交相による審査では中立性も望めないとする玉城デニー知事は「自作自演の極めて不当な決定」と主張してきた。その是非が司法の場で問われよう。
 軟弱地盤についても国と県の主張は対立したままだ。政府は地盤改良の費用を公にしておらず、総事業費を「少なくとも3500億円以上」とする。一方、県は総工費は最大2兆6500億円まで膨らむとの見通しを示してきた。
 工期も防衛省が3年8カ月と試算する一方、県は5年は必要と主張する。玉城知事は「適切な場所と言えないことは明らかだ」としており、承認撤回の正当性まで立ち入った審理になるのかも注目される。
 玉城知事は7月の提訴に伴い「政府に対し、司法によらず、対話による解決の必要性と重要性を繰り返している」とも訴えている。
 翁長前知事時代から数えて国と県の訴訟は8件になった。それ自体が政府の説明姿勢の欠如と、「辺野古ノー」の民意を顧みない問答無用の姿勢を証明している。
 安倍首相は6月の沖縄全戦没者追悼式で「基地負担の軽減に向けて確実に結果を出す」と述べた。対話と沖縄の人々の納得を欠いては、それは禍根を残すだけではないか。
カテゴリー: 社説


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