2019.08.10 08:00

【県最賃上げ最大】中小企業への目配り必要

 高知県の2019年度の最低賃金(最賃)が、現行の時給762円から28円、率にして3・67%引き上げられ790円となる見通しとなった。高知地方最低賃金審議会が高知労働局長に答申した。
 中央審議会が示した本県の目安額26円に2円上乗せした。率、額とも02年度以降で最大となる。それでも東京、神奈川は千円を超えるなど都市部との差は依然大きい。
 本県の引き上げ額は4年連続で20円を超えており、負担が増す中小・零細企業への目配りなど課題もなお残ったままだ。
 賃金を底上げし、個人消費を喚起してデフレ脱却につなげる―。安倍政権の戦略に沿う形で近年、最賃を3%程度引き上げる高い目安設定が続いている。それを「追い風」に本県でも大幅にアップしてきた。
 国民の暮らしを支えるセーフティーネットであり、地域の活力にもつながる最賃の底上げは歓迎したい。
 半面、解消されないのが地域間の格差だ。
 本県は19年度、沖縄や長崎、熊本、秋田などとともに最下位グループとなる見通し。四国内では愛媛に並んだものの、香川(818円)、徳島(793円)とはまだ差がある。東京や神奈川とは200円以上開いている。
 むろん地域によって経済事情は違う。最賃に地域差があっても仕方ないとの考え方もあろう。一方で人手不足が深刻化する中、最賃の低い自治体から高い自治体へ労働力が流れる傾向が指摘されている。最賃格差が東京圏の吸引力を強めている可能性は否定できない。
 現行では経済情勢に応じて都道府県を4ランクに分け、ランクごとに目安を示していることもあり地域差が縮まりにくい。このため最賃の全国一律化を目指す議員連盟が、自民党内に発足している。
 世界的に見ると、最賃は全国一律が一般的という。その上で学生や見習い労働者らの最賃と一般成人労働者の最賃を区別したり、年齢などで段階的に設定したりしている。
 さまざまなケースのメリットやデメリットを分析したい。地域間格差を解消するため、最賃制度の在り方を巡って腰を据えた論議を始めるときではないか。
 急ピッチの最賃アップは企業の縮小や廃業・倒産を引き起こし、逆に雇用が失われるとの指摘も根強い。とりわけ中小・零細企業が多い本県などはその懸念が強い。
 国は賃金を引き上げ、生産性向上のための設備投資を行った企業への助成制度なども設けている。しかし本県では利用件数が伸び悩んでおり、制度の使い勝手の悪さを挙げる声も出ている。国はこうした声も受け止めて、最賃アップとセットで中小企業の支援拡充に一層努めなければならない。
 現在の最賃水準でフルタイム働いても、貧困状態から抜け出せない人は多い。最賃を持続的に引き上げることができるよう、国は環境整備を進めてほしい。
カテゴリー: 社説


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