2019.07.28 08:00

【バリアフリー】国会が率先して進めたい

 国民の代表を迎える国会として、さまざまな障害がある人が支障なく活動できるよう率先してバリアフリー化を進めたい。
 重い身体障害のある船後(ふなご)靖彦氏と木村英子氏=いずれもれいわ新選組=が参院選で当選したことを受け、参院議院運営委員会の理事会がバリアフリー化を本格的に進めることで合意した。
 2人とも手足を自由に動かすのが難しい障害があり、通常よりサイズが大きい車いすを使っている。そのため中央玄関にスロープを設置し、本会議場の出入り口近くに新たに2議席を設けることにした。
 採決は、参院が採用している押しボタンは介助者が押す。正副議長選出などの記名投票は介助者の代筆を認めた。大きな車いすのまま乗り降りできる福祉車両がないため、導入の検討も始めたという。
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の船後さんは声が出ず、ALS患者らが利用する「分身ロボット」の導入を要望している。
 障害の種類や重さなどによって対象者が求める支援やサポートはそれぞれ異なる。これまでにない要望だとしても、2人や支援者らの考えを十分聞いた上で、議員活動に支障がないよう環境を整える必要がある。
 「車椅子を国会へ」と訴えた八代英太氏が1977年の参院選で初当選した後、議場やトイレなどのバリアフリー化は徐々に進んだ。タレントとして公演中に八代さんは舞台から転落して脊髄を損傷。国会傍聴に車椅子で入れない不便さに直面し、福祉充実のために政治家を志したという。衆参で通算30年近く活動したが、この間に障害者の国政参加が活発になったとはとてもいえない。
 障害がある人がどんな困難を抱え、どんな支援を必要としているのか。むろん障害の有無にかかわらず国会全体で議論すべきだが、当事者の議員を増やすことが障害者の理解を深めることにつながる。活動しやすい環境整備はその大前提だ。
 しかし、今回の参院のケースでも重度の障害者が議員になって初めて対応を検討しており、「出遅れ感」は否めない。ほかの官公庁や市町村議会なども重度の障害者の対応に支障はないだろうか。早めに検討すべきだ。
 また、今回の2人の介助費負担を巡っては課題も持ち上がっている。現行制度で議員活動は収入が生じる「経済活動」とみなされ、介助費の公的補助が出ない可能性もある。制度の在り方を見直すきっかけにしてほしい。
 来年の東京五輪・パラリンピックへ向けて国は、障害者や高齢者が利用しやすいよう段差の解消やホームドア設置の計画作成を公共交通事業者に義務付けるなどバリアフリー環境の整備を進めている。
 ハード整備とともに必要なのが、さまざまな考えを持つ人が互いに理解し合う「心のバリアフリー」だ。障害の有無に関係なく、全ての人が生きやすい社会を目指したい。
カテゴリー: 社説


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