2019.07.26 08:00

【リブラ規制】本質を見据えた議論を

 まだ海のものとも山のものともつかぬ金融サービスが、構想が発表されるやいなや、各国の政府や中央銀行を慌てさせ、身構えさせている。実現した場合の影響力の大きさを物語っていよう。
 米交流サイト大手フェイスブック(FB)の暗号資産(仮想通貨)「リブラ」である。
 今月中旬に開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、リブラへの規制を含む対策を早急に策定することで一致した。FBがリブラの計画を発表したのは6月中旬であり、異例といえる対応の早さだ。
 そもそもリブラとは何か。
 既に各国には、インターネット上で取引できるデジタルの仮想通貨「ビットコイン」などがある。だが管理主体が存在せず、価値を担保する実在の資産もないため、相場変動が大きいという傾向がある。
 リブラはそれらの「欠点」を補うのが特徴だ。構想ではスイス・ジュネーブに本部を置く非営利組織「リブラ協会」が母体となり、預金のほか送金や支払いなどのサービスを提供する。
 同協会にはFBのほか、米クレジット大手ビザなど30以上の企業が名を連ねている。仮想通貨の裏付けとなる資産は、ドルや円、ユーロなどの法定通貨や国債で保有する。
 既存の世界的企業や各国の法定通貨が参加することで、預金や決済時のリスクを小さくし、運営の中立性を図る狙いがあるようだ。
 問題は、世界で27億人の利用者を持つFBがリブラの中心的役割を担うことにある。FBのような巨大IT企業は市場支配力が強力で、利用が瞬時に拡大する可能性もある。
 国や中央銀行が通貨を発行し、銀行が流通させる既存の金融システムにとっては、従来の秩序を揺るがす脅威と映ろう。「通貨発行という国家主権を脅かしてはならない」とリブラへのけん制論も出た。
 FBのザッカーバーグ最高経営責任者は「途上国で銀行口座を持っていない人でも利用できる」とリブラの社会的意義を強調する。
 それでもFBが過去に大量の個人情報を流出させた問題などから、各国の警戒感は根強い。テロ資金になる恐れやマネーロンダリング(資金洗浄)対策への懸念もある。
 FB側は今月、米議会上院の公聴会で、「規制上の懸念を解決し、適切な承認を得るまでリブラを発行しない」と説明。当初、来年の前半としていた開始時期には、こだわらない姿勢を示した。
 FB側、金融当局側ともに、何らかの規制が必要なことを認めており、課題解決の方策は話し合うべきだろう。だがリブラが提起する問題の本質は、もっと大きいものだ。
 一つの巨大IT企業が国家という概念を超えて、利用者個人までを支配しかねない。便利さと引き換えにそんな危うい社会を、是とするのかどうか。技術論の前に、世界の将来を見据えた議論が必要だろう。
カテゴリー: 社説


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